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3・2・B1F 展示室

私のいる場所-新進作家展vol.4

ゼロ年代の写真論

2006.3.114.23

  • 開催期間:2006年3月11日4月23日
  • 休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
  • 料金:下記をご覧下さい。

■料 金 :
【3会場共通観覧料】
一般 1,200(960)円/学生 1,000(800)円/中高生・65歳以上 700(560)円

【1会場観覧料】
一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
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東京都写真美術館では2002年から、写真表現の可能性に挑戦する創造的精神を支援し、写真愛好者やひろく一般層に向けて、現代の写真映像文化を紹介することを目的とした[日本の新進作家展]を立ち上げ、毎年、新進気鋭の作家によるグループ展を開催しています。これまでに「風景」「幸福」「花」といった普遍的なテーマに基づいて現代写真家や写真というメディアを用いる現代美術作家を広く一般に向けて紹介してきました。開館10周年を迎えた2005年度 (2006年)の新進作家展は、「私性(プライベイト)」を全体テーマとして、現代の写真表現をこれまでより多様な観点から検証します。本展は、「現代写真」や「現代美術」またハイカルチャーやサブカルチャーといった複数の文化領域に分化・棲み分けされた状況である現在のシーンを連続したものと捉え、ゼロ年代(西暦2000年以降)をひとつの展覧会として提示することを目指します。日本および海外で、2000年以降に頭角をあらわしてきた若手・中堅作家のうち、7カ国から15作家/グループを取り上げ、写真映像の新たな可能性や価値観を問いかける展覧会とするものです。
















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「自分自身を描くこと」は、その時代を生きた彼らの存在証明として、有史以来アー ティストたちにとってもっとも重要なテーマでした。そして現在に至るまで、アーティストたちはそれぞれの<現在>を探り、描き出す作業を続けています。それは穏やかな家族との生活であり、日々更新される日記のようなものであり、またみずからを写し出す鏡としての記憶をたどる旅だとも言えるでしょう。わたしたちは、彼らの作品をとおして日頃見失いがちな日常の断片やその重なりの意味を新たに気づかされるにちがいありません。







(1959年生まれ、ベルギー)



ジャン=ポール・ブロヘス
シリーズ「雨を連れて来た男」より
1990-2000年 Jean-Paul Brohez
From the series Aplovou, 1990-2000


一見何気ない日常のワンシーンのような彼の写真スタイルは、実は巧妙に構成されている。特に対象物を探すこともなく、目の前にあらわれた「物事」をただ受け入れ、軽快に写すこと。彼にとっての写真とは、「世界の一部であること、生きていること、見ること、そしてその感情をわかちあうこと」にほかならない。

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(1961年生まれ、フランス)



アントワーン・ダガタ(参考作品)
渦 I (部分)2003年
Antoine D'Agata
Vortex I (in Detail),2003


1980年ごろから世界各地を放浪し、90年ICP(ニューヨーク国際写真センター)でNゴールディン、Lクラークらに師事し写真を学ぶ。2001年ニエプス賞を受賞。2004年よりマグナムに参加。



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(1961年生まれ、日本)



染谷亜里可
Decolor - 字幕(そして近代に備えましょう)2005年
Arika Someya
from the series Decolor, 2005


布や液体を用いた絵画作品などを発表している彼女は、自分の記憶にひっかかった映像(映画やビデオなど)を一度写真におこして、それから印象的に残った字幕に個人的な記憶を重ねてふたたび描くという作品を新たに発表した。そこには、記号化された映像と記憶が浮かび上がる。展示では新作予定



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(1972年生まれ、フィンランド)



エリナ・ブロテルス
狂気 2002年
シリーズ「ニュー・ペインティング」より 2001-02年
Elina Brotherus
La folle, 2002 from the series The New Painting, 2001-02


17世紀絵画にみられる理想的な風景画をみずからの作品に引用し、反映させた彼女の作品は、「新しい絵画」と名づけられている。特徴的なセルフポートレイトには、さらに私的な物語性を漂わせている。「毎日の出来事ほど楽しいことはない。なぜなら、私たちのまわりは美にあふれているからだ」



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(1972年生まれ、日本)



塩田千春(参考作品) いとこの顔、
シリーズ「ファミリー・ポートレイツ」より 1998年
Chiharu Shiota
My cousins face,1998,
from the series Family Portraits


京都精華大学卒業後、ドイツに渡りマリーナ・アブラモヴィッチとレベッカ・ホルンの指導を受ける。自己の起源をさぐるパフォーマンスやインスタレーションをはじめ、写真やビデオなどの映像作品も数多く発表。「私の記憶はどこからくるのか。DNAからDNAへ。その対話を試みたい」 展示では新作予定



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(1981年生まれ、フィンランド)



アンニ・エミリア・レッパラ
シリーズ「若木」より 2005年
Anni Emilia Leppälä
from the series Seedlings, 2005


ヘルシンキ工芸大学修士課程在学中。2004年以降フィンランド文化財団などから新人賞や奨学金を多数授与される。一切の説明を排した、きわめてプライベイトな作品は彼女自身の内面世界を映し出す。「私にとって写真とは、曖昧模糊な瞬間の光を、目に見えるかたちにすることである」



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デジタルの時代を迎え、インターネットの普及にともなって<私性>はいとも容易に公開されると同時に、ときには意図しないところで暴かれるという問題を抱えています。また、<私性>が広く流布されていく一方で、匿名性の高い、あるいはごく限られた人々との結びつきにのみこだわる、いわゆる個人の「セル化」も顕著に見られるようになってきました。いかに個人的なテーマを普遍的なテーマへと置き換えていけるのか、それこそがこの時代に生きるわたしたちにとってもっとも<現代的>なテーマだと言えるでしょ う。



(1960年生まれ、韓国)



姜愛蘭(参考作品)
「デジタル・ブック・プロジェクト」より
Kang, Ai-ran
Interactive Book, 2003 , from the series Digital Book Project 
Keumsan Heiri−with Books−Lighting Books Countesy of Yumiko Chiba Associates


日本への留学経験をもつ彼女は、主に自分自身の、あるいは公共の場にふさわしい「書庫」をつくりあげるインスタレーションを表現している。青白く発光する本のオブジェは、鑑賞者の目をとらえて離さない。
「<本>は自己のアイデンティティを象徴するものです」展示では新作予定

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(1963年生まれ、フランス)



ニコール・トラン・バ・ヴァン
シリーズ「秋/冬コレクション2003/04」より 2003年
Nicole Tran Ba Vang
from the series “Autumn/winter 2003/04 Collection”, 2003 ,Anne-Claire


ファッションを学んだ彼女は、<身体と衣装>の奇妙かつ魅力的な関係にひかれ映像作家へと転向する。2000年以降パリ・コレを模した作品を半年ごとに発表。同年パリ・ヨーロッパ写真館より「新人賞」を受賞した。 「ヌードとはけっして裸ではない。わたしたちは常に身体という衣装をまとっている」
  http://www.tranbavang.com

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(1966年生まれ、オランダ)



ジャクリーヌ・ハシンク
2000年シリーズ「マインドスケープ」よ り
Jacqueline Hassink
Personal Coffee Cups, USA, (in detail), 2000,
from the series Mindscapes



トロンデイム芸術アカデミー卒業。在ニューヨーク。会社という公的な職場環境において、個人がそれぞれ持ち込むマグカップはそのまま働く人々の個性をあらわす。所持者には「何年使っているか」「一日に何杯飲むか」を質問した。「個人のマグカップを撮ることで、私は会社というものを地図化したかった」



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(1967年生まれ、日本)



原美樹子(参考作品)
シリーズ「まなざしの触手」より 2006年


彼女の視線は、日常の何気ない街の光景やふと見せる無防備な人々の行為にそそがれる。その視線は、内側と外側の両域からわきあがってくる非常に人間的な感情によって突き動かされているかのようだ。

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(1975年生まれ、ハンガリー)



サボー・シャロルタ
シリーズ「実験的な集合住宅」より 2002-03年
Szabó Sarolta
from the series Experimental Housing Estate, 2002-03


ハンガリー工芸大学卒業後、現在教職課程に在学中。コンピュータによる設計図と写真を組み合わせた「実験的な集合住宅」シリーズは、すべてフィクションの物語で綴られている。「孤立と無名性の恐怖は、大都市の集合住宅に住む人々の都市生活につきものである」

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(1978年生まれ、日本)




転校生SOS 2004年、
シリーズ「休日の写真館」より
Masanori Ikeda from the series The Photo Studio of
A Holiday, 2004


写真館を営む家庭に生まれた彼は、新たな出会いや物語を求めて写真館を飛び出した。そこで出会った友人たちやこどもたちは、彼の特異な視線によって物語の主人公へと変わっていく。「記念撮影のスタイルを創る。それが一番のねらいである」。展示では新作予定


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