本日は開館しております(10:00-18:00)


第1部 星条旗 1839-1917
M .ブレイディ・スタジオ 「リンカーンの肖像」 1860年代前半 ティンタイプ

3F 展示室

ヴィジョンズ オブ アメリカ

第1部 星条旗 1839-1917

2008.7.58.24

  • 開催期間:2008年7月5日8月24日
  • 休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日) ※7/22(火)は臨時会館
  • 料金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
  • ※各種カード割引あり

( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/
小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料

写真初期から現在にいたるまで、特に20世紀においては世界の写真表現をリードした国・アメリカ。そこは、同国籍の作家はもちろん、ヨーロッパやアジアの作家にとっても重要な創造の「場」であり、「対象」でもありました。
東京都写真美術館コレクション展「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」は、19世紀のダゲレオタイプから現代に至るまで「アメリカ」という場の中から生み出された多種多様な表現を持つ作品を、時代によって3つのパートに分けて展示。アメリカ人以外の作家も含めて、アメリカという「場」を考えることによって、これまでになかった写真/写真史におけるアメリカの意味を問い直すことをめざしています。また、そこには、アメリカの建国以来の歴史が見て取れるだけではなく、「グローバル/ローカル」といったアメリカ文化がもつ重層性が見えてくるのではないでしょうか。さらに、日本人にとってなじみのある作品や写真家を多数ご紹介できる機会でもあり、写真ファンならずとも広く楽しめる展覧会です。



【第1部の出品作家】
エリファレット・ブラウン・ジュニア、ティモシー・H.・オサリヴァン、カールトン・E.・ワトキンズ、ウィリアム・H.・ジャクソン、ジェイコブ・A.リース、ルイス・W.ハイン、アルフレッド・スティーグリッツ ほか

【第1部の展示構成】※開催中の展示解説より抜粋
1.ダゲレオタイプ渡米
1839年8月19日。世界で最初の写真方式であるダゲレオタイプが、フランスから世界へ発信された。そのわずか1ヶ月後に、モールス信号の発明で知られるサミュエル・モールスが、ニューヨークで妻と娘の肖像写真を20分という現在では考えられない長時間露光によって撮影した。翌1840年には世界で最初の写真館「ダゲーリアン・パーラー」がニューヨークで開設された。これをさきがけとして、ボストン、フィラデルフィアを中心として、アメリカ全土に写真技術は伝播していく。アメリカの写真は肖像からはじまったといっても過言ではない。

2.写された戦争と作られる神話
死者61万人あまりに及んだ南北戦争は、写真による戦況報道の始まりだった。
これまでの戦争写真は、政府や軍部の行動記録であり、報告の手段であった。南北戦争はこれにとどまらない。マシュー・B・ブレイディは暗室を備えた馬車を設え、アレクサンダー・ガードナー、ティモシー・オサリヴァンら25人の写真隊を組織、北軍に従軍し、これを元に写真帖が販売された。南北戦争記録の多くは勝利した北軍の視点である。奴隷解放を旗印に掲げた戦争の勝利は、自由の国アメリカの象徴的な歴史として神話化されていくのである。

3.そして、西部へ
フロンティア(frontier)とは、1平方マイル(約2.56平方キロメートル)につき、人口が2人以上6人以下の地域を指す。この外側がフロンティア・ラインである。
このラインを拡張する開拓を捉えたオサリヴァン、ワトキンズ、ジャクソンらによる写真は、アメリカにおける風景写真の黄金時代といわれる。実際、美しい風景写真と感じられる作品が多い。しかし、調査対象として西部の自然を冷静な眼で分析するために制作された写真である。

4.「動き」を写した男
「疾走する馬は空中で四脚を伸ばしているのか?」
1872年、この疑問の賛否から、元カリフォルニア州知事スタンフォード氏と競馬関係者の間で賭が始まった。イードワード・マイブリッジ (1830-1904)は元知事に雇われ、同年中から撮影実験による決着を試みる。巨大な装置を考案し、6年の歳月を経て実験は成功した。実験の結論、馬は空中で四脚を伸ばすのではなく、逆に四脚を縮めていることがわかった。そして、マイブリッジは、人間や動物の動きを分解することをライフワークにしたのである。ここに映画の基礎とスナップショットの基点が生まれたのである。

5.よりよき社会を求めて
南北戦争後のアメリカには、資本主義を背景として加速される工業化と都市化の波が押し寄せ、さまざまな社会問題が引き起こされる。ニューヨークのスラム街にカメラを向けたリース、移民や児童労働の実態にカメラを向けたハイン、彼らの写真には社会的な現実を忠実に記録するだけではなく、その過酷な現実を改良しようする意志が貫かれている。写真は社会を衝き動かすメディアとして、アメリカという場の中で、その力を発揮してゆくのである。

6.アメリカ芸術としての写真
芸術としての写真の追求は、ピクトリアリズム(絵画主義)を標榜しながら、19世紀末から20世紀初頭の世界を席巻する。後に「近代写真の父」と称されるアルフレッド・スティーグリッツは、1902年に「写真分離派(フォト・セセッション)を結成して、ヨーロッパとは異なるアメリカ独自の写真芸術を追究し始める。その機関誌『カメラ・ワーク』に掲載された作品は、アメリカという文化的風土に根ざす表現が世界をリードする位置に在ることを雄弁に語っていよう。


□主催:東京都 東京都写真美術館
□協賛:凸版印刷株式会社
□協力:フォト・ギャラリー・インターナショナル/新潮社

展覧会図録

「メモリーズ・オブ・アメリカン・ドリーム」
今収蔵作品展の公式ガイドブックです。ダゲレオタイプから、スティーグリッツ、ロバート・フランクなど、時代背景や写真史的位置づけを学芸員が解説しております。

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