本日は開館しております(10:00-18:00)
 
デヴィッド・ヴォイナロヴィッチ 《無題(転げ落ちるバッファロー)》1988-89年
Courtesy of the Estate of David Wojnarowicz and P.P.O.W Gallery, New York NY
2F 展示室

ラヴズ・ボディ

生と性を巡る表現

2010.10.212.5

  • 開催期間:2010年10月2日12月5日
  • 休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日) ※11月8日(月)は臨時開館   
  • 料金:一般 800(640)円/学生 700(560)円/中高生・65歳以上 600(480)円
  • ※各種カード割引あり

( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/ 小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料

※毎週木曜日はカップルデイ(カップルのうちお1人が「ラヴズ・ボディ」展を無料でご観覧いただけます。
チケットご購入の際に「カップルです」とお申し出ください)

__________________________________________________

東京都写真美術館では1998年11月から99年1月に「ラヴズ・ボディ ヌード写真の近現代」と題した展覧会を開催し、好評を博しました。ヌード写真をエロスや性の表象としてだけではなく、関係性や主体性などの視線の力学によって捉え直し、新たな身体の表象の可能性や意味を考える展覧会でした。「ラヴズ・ボディ 生と性を巡る表現」は、そうした現代の身体表象から導き出された問題をより鮮明にしようとする試みです。
現在、世界が共有する問題としてエイズがあります。1980年代後半から90年代前半、エイズは単なる不治の病として多くのアーティストの命を奪っただけではなく、「エイズ」を巡ってあぶり出された社会的偏見や差別、社会への疑問が、写真・美術のあり方を根本的に問い直す契機となりました。
エイズを抱えた多くのアーティストがエイズに向き合い制作することで、この「社会的病」を自分たちの問題として捉え、エイズがわたしたちに問いかける様々な作品が生まれました。そして今も、セクシュアリティの変容や他者表現、身体表象、アートと政治の問題など、新たな表現の可能性を思索しています。この展覧会は美術や写真のある側面に大きな変化を与えるほどに影響力を持つそうした作品の意味を検証し、問い直す試みです。


【出品作家紹介(8名)】

AAブロンソン
AA Bronson (1946- )
カナダのバンクーバーに生まれる。1969年にトロントで、ホルヘ・ゾンタル(Jorge Zontal, 1944-1994)とフェリックス・パーツ(Felix Partz, 1945-1994)と共に、アーティスト・グループ「ジェネラル・アイディア」を結成する。「ジェネラル・アイディア」は、1994年にゾンタルとパーツが相次いでエイズにより他界するまで、パフォーマンス、ヴィデオ、写真、絵画、彫刻、『ライフ』誌をもじった雑誌『ファイル』の出版(1972-89年)など、幅広いメディアを駆使しながら商業主義やメディアへの批評に満ちた作品を発表、特に1987年からはエイズについて積極的に作品を発表した。「ジェネラル・アイディア」の25年の活動において、123の個展を開催し、パリやシドニー、サンパウロ、ヴェネツィアなどの国際ビエンナーレやドクメンタのほか、149のグループ展に招聘されている。ゾンタルとパーツの死後、AAブロンソンはソロ活動を開始する。死や喪失、癒しなどをテーマに作品を発表し、オーストリアのウィーン分離派美術館(2000年)やシカゴ現代美術館(2001年)、MITリスト・ヴィジュアル・アート・センター(2003年)などで個展が開催されるなど、国際的に活躍している。トロントとニューヨークに在住。

 

ハスラー・アキラ/張由紀夫
Akira the Hustler/Cho Yukio (1969- )
東京に生まれる。京都市立芸術大学大学院絵画研究科修了。1993年よりHIV/AIDSをめぐる様々な活動を開始する。2000年よりハスラー・アキラの名前で作品を発表し始め、東京やフランス、ベルリンなどのグループ展に招聘される。コンドームのパッケージを様々なアーティストと共に制作し、都内のゲイバーなどに配布するなど、アーティストとしてだけでなく、エイズ予防財団流動研究員、コミュニティセンターaktaのスタッフとして、音楽やアートを用いてメディアとNPOの架け橋となるようなアクティヴィストとしての活動も行っている。2004年にはNPO法人ぷれいす東京と共に「Living Together計画」を発足。HIV陽性者やその周囲の人々の現実を伝えていく活動を積極的に進めている。

 

フェリックス・ゴンザレス=トレス
Felix Gonzalez-Torres (1957-1996)
キューバのグアイマロに生まれる。1971年に一時期、スペインのマドリードに住み、プエルトリコに移る。プエルトリコ大学で制作活動を始め、1979年に奨学金を得てニューヨーク・ブルックリンのプラット・インスティテュートやホイットニー美術館インディペンデント・スタディ・プログラムで学ぶ。1983年にプラット・インスティテュートを卒業、1987年には国際写真センターとニューヨーク大学より芸術修士号取得。同じ頃アーティスト・グループ「グループ・マテリアル」に参加する。ゴンザレス=トレスのアーティストとしての活動は、1996年に逝去するまでの短い期間に限られたが、その間に目覚ましい活躍をする。ホイットニー美術館ビエンナーレ(1991年)、ニューヨーク近代美術館のプロジェクト(1992年)、シドニー・ビエンナーレ(1996年)などに招聘されるほか、1994年にはロサンジェルス現代美術館やハーシュホーン美術館ほかで個展が、翌年、グッゲンハイム美術館で回顧展が開催され、世界巡回された。1996年1月9日、エイズによる合併症のため、フロリダ州マイアミにて死去。その後も評価はますます高まり、ドイツ・ハノーファーのシュプレンゲル美術館(1997-98年)やイギリス・ロンドンのサーペンタイン・ギャラリー(2000年)などで個展が開催され、2007年のヴェネツィア・ビエンナーレでは、ロバート・スミッソン以来2人目の、没後のアーティストとして、アメリカ館を代表することになった。

 

エルヴェ・ギベール
Hervé Guibert (1955-1991)
パリ郊外、オー=ド=セーヌ県サン=クルーに生まれる。ジャーナリストとして『ル・モンド』紙で映画を担当していた1977年に小説『死のプロパガンダ』を発表し、本格的な執筆活動に入ると共に、写真の制作も始める。1983年にパトリス・シェローと共同で執筆した脚本『傷ついた男』は映画化され、セザール賞を受賞した。1988年にエイズ感染を告知される。1990年にエイズ患者であることを公表した自伝的小説『ぼくの命を救ってくれなかった友へ』を発表し、センセーションを巻き起こした。1991年12月12日に自殺をはかり、パリ郊外の病院に運ばれ、12月27日に死去した。『ヴァンサンに夢中』『憐れみの処方箋』『召使いと私』『悪徳』『赤い帽子の男』『楽園』『幻のイマージュ』『犬たち』『サイトメガロウイルス』など、日本でも多くの小説が翻訳出版されている。写真家としても生前から個展や写真集の出版を通して高い評価を得ていたが、死後もフィラデルフィアのSlought Foundation(2007年)やローザンヌ、マドリード、ブリュッセルなどで個展が開催されている。

 

スニル・グプタ
Sunil Gupta (1953- )
インドのニューデリーに生まれる。1960年代後半に両親と共にカナダのモントリオールに移住する。1970年代にニューヨークに移り、ニュー・スクール・フォー・ソーシャル・リサーチで写真を学ぶと共に、70年代の同性愛者差別撤廃運動と出会う。その後ロンドンに移り、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートなどで写真を学ぶ。写真家であると同時に著述家、キュレーターとしても活動し、評論集『Ecstatic Antibodies: Resisting the AIDS Mythology』(1990年)をテッサ・ボフィンと編集するほか、人種や同性愛を扱った自伝的な作品『Pictures from Here』(2003年)や『Wish You Were Here: Memories of a Gay Life』(2008年)などにより国内外で高い評価を受ける。1995年に自身もHIVポジティヴと診断された当事者として、同性愛嫌悪やHIVポジティヴの人々への偏見をなくすための活動を続けている。カナダ国籍でロンドンおよびデリーに在住。

 

ピーター・フジャー
Peter Hujar (1934-1987)
ニュージャージー州トレントンに生まれる。1946年にマンハッタンに移り、雑誌や広告、肖像写真家として活動した。1960年代後半にはスタジオを開設、70年代や80年代のイースト・ヴィレッジに集う人々、キャンディ・ダーリングや恋人であったデヴィッド・ヴォイナロヴィッチ、スーザン・ソンタグなどを撮影した。1976年に写真集『Portraits in Life and Death』を発表する。1987年、エイズによる合併症のため死去。ロバート・メイプルソープやナン・ゴールディンなどに多大な影響を与えた存在だったが、生前の彼の評価はニューヨークのイースト・ヴィレッジなどに限られた。1994年にアムステルダム市立美術館およびスイスのヴィンタートゥール写真美術館で大規模な回顧展「Peter Hujar: A Retrospective」が開催され、作品集も出版される。2008年には初期作品も含めた回顧展がロンドンのICAで開催されるなど、1970年代、80年代のアメリカを代表する写真家としての評価が高まっている。

 

デヴィッド・ヴォイナロヴィッチ
David Wojnarowicz (1954-1992)
ニュージャージー州レッドバンクに生まれる。船乗りの父とオーストラリアから来た若い母との間に生まれる。彼が2歳の時に両親は離婚、16歳でニューヨークの高校をドロップアウトしてストリートで暮らす。長い放浪の後、1978年にイースト・ヴィレッジに戻り、クラブで働きながら、ポストパンク・バンド「3 Teens Kill 4」に参加。また、映画や絵画、写真、イラスト、パフォーマンス、文章など様々な作品を発表する。1981年、ピーター・フジャーと出会い、フジャーは彼の恋人となり師となる。1985年にはホイットニー・ビエンナーレに選出された。1980年代の後半にHIVポジティヴと診断された後は、エイズ・アクティヴィストとしてセクシュアリティや偏見についての多くの作品を制作するだけでなく、裁判や政治活動などにも参加して積極的に発言した。1992年、エイズによる合併症のため死去。作品はニューヨーク近代美術館やホイットニー美術館など多くの主要美術館に収蔵され、1999年にニューヨークのニュー・ミュージアムで開催された回顧展「Fever: The Art of David Wojnarowicz」は高い関心を集めた。

 

ウィリアム・ヤン
William Yang (1943- )
オーストラリアのノース・クイーンズランドに中国系の3世として生まれる。1960年代後半にシドニーに移る。脚本家として仕事を始めた後、フリーランスの写真家として活動を展開する。1977年の初個展では、自分も当事者であるシドニーのゲイライフを日記のような率直さで捉えた作品でセンセーションを巻き起こした。中国系としてのルーツやアイデンティティ、ゲイのセクシュアリティやAIDSとの関わりをテーマに『悲しみ』(1996年)や『Friends of Dorothy』(1997年)、『China』(2008年)など多くの作品を発表し、作品は国内外で展示され国際的な評価を得た。特に1989年に発表された写真とパフォーマンスで綴る独白劇のスライドショーは、彼の代名詞となっている。1993年、第9回東川賞海外作家賞を受賞。1998年にはクイーンズランド大学より名誉文学博士号が贈られている。シドニー在住。


作家会見(9月30日 会場:日本記者クラブ)の様子はこちらから
http://www.youtube.com/user/jnpc#p/u/2/s8oiWvbz2Bo

    
ウィリアム・ヤン 《アラン》 1989-90年
ピーター・フジャー《ビー・スイート、ニューアーク》 1985年
©1987 The Peter Hujar Archive LLC,Courtesy of Matthew Marks Gallery, New York
フェリックス・ゴンザレス=トレス《「無題」 (自然史)》1990年、 13点組の一部、東京都写真美術館蔵、
©The Felix Gonzalez-Torres Foundation, Courtesy of Andrea Rosen Gallery,New York


 
エルヴェ・ギベール 《ヴィラ・メディチ》 1989年
スニル・グプタ 《ビクラム》 2007年


□主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館/朝日新聞社 
□助成:芸術文化振興基金/財団法人石橋財団/財団法人アサヒビール芸術文化財団/Asian Cultural Council/オーストラリア大使館
□後援:米国大使館
□協賛:株式会社ニコン/株式会社ニコンイメージングジャパン/株式会社資生堂/凸版印刷株式会社/東京都写真美術館支援会員
□協力:アサヒビール株式会社/京都精華大学情報館メディアセンター/community center akta/ウェスティンホテル東京/TOKYO FM

関連イベント

アーティスト・トーク *逐次通訳付き
2010年10月2日(土) 15:00~ AA ブロンソン  終了致しました
2010年10月2日(土) 16:00~ スニル・グプタ  終了致しました
2010年10月3日(日) 16:00~ ウィリアム・ヤン  終了致しました
会場:2階企画展示室内
※展覧会チケットの半券(当日消印)をお持ちの上、展示室入口にお集まりください。
※10月3日(日)のみ、会場が「1階創作室(アトリエ)」になります。ご了承下さい。
スペシャル・イベント「Think About AIDS」[公開録音]
2010年11月8日(月) 19:00~20:30  終了致しました

共催=Living Together 計画/TOKYO FM
朗読会(HIV陽性者の手記)+ライブ・パフォーマンス
ゲスト:中村 中(歌手・作詞作曲家)、佐々木恭子(フジテレビアナウンサー)
マイア・バルー(ミュージシャン)、安めぐみ(タレント)
田中ロウマ(ミュージカル「RENT」キャスト)、ARATA(俳優)
会場:1階ホール
対象:「ラヴズ・ボディ」展チケットをお持ちの方(会期中の半券可)
定員:190名
受付:当日10:00より当館1階受付にて整理番号付き入場券を配布します。
「ラヴズ・ボディ」展チケット(会期中の半券可)をご提示(またはご購入)の上、お受け取り下さい。
※混雑が予想されますので、お早めにご来館下さい。
開場:18:30より、整理番号順入場、自由席。
19:15までにお越しいただけない場合は、キャンセル扱いとなりますのでご了承ください。
公開録音となりますので、イベント中の入退室はご遠慮ください。

この公開収録の模様は、TOKYO FM 「トウキョウ カウンシル」(パーソナリティ:菅付雅信)で

11月19日(金)17:00-18:00にオンエアされる予定です。

TOKYO FMのホームページはこちらから

tokyofm

対談「エイズとアート」
2010年10月16日(土) 15:00~16:30  終了致しました
張由紀夫×溝口彰子(ビジュアル&カルチュラル・スタディーズ)
会場:アトリエⅠ
対象:展覧会チケットをお持ちの方
定員:70名
受付:当日10:00より当館1階受付にて整理番号付き入場券を配布します
開場:14:30より、整理番号順入場、自由席
ラヴズ・ボディ 特別講演会
2010年11月13日(土) 18:30~20:00  終了致しました
堀江敏幸(小説家、フランス文学者)
会場:1階ホール
対象:展覧会チケットをお持ちの方
定員:190名
受付:当日10:00より当館1階受付にて整理番号付き入場券を配布します
開場:18:00より、整理番号順入場、自由席
担当学芸員によるフロア・レクチャー
2010年10月8日(金) 14:00~  終了致しました
2010年10月22日(金) 14:00~  終了致しました
2010年11月12日(金) 14:00~  終了致しました
2010年11月26日(金) 14:00~  終了致しました
※展覧会チケットの半券(当日印)をお持ちの上、会場入り口にお集まりください。
スペシャル・イベント「Living Together/STAND ALONE」
2010年11月23日(火・祝) 18:30~19:30  終了致しました

HIV陽性者による手記の朗読+ライヴ・パフォーマンス 緊急決定!

出演:ジャンジ♥Madame Bonjour JohnJ(パフォーマー)
藤原良次(NPO法人りょうちゃんず代表)    
長谷川博史(編集者/NPO法人JaNP+代表)
映像:棚田清(映画監督・映像作家)
会場:1階ホール
対象:展覧会チケットお持ちの方
定員:190名
受付:当日10:00より当館1階受付にて整理番号付き入場券を配布します
開場:18:15より、整理番号順入場、自由席

展覧会図録

Love's Body art in the age of AIDS
展覧会の出品作品と執筆者によるテキストを掲載しています。
B5判変形 183ページ ※日英併記

図録一覧はこちら