ヴィジョンズ オブ アメリカ
第3部 アメリカン・メガミックス 1957-1987
2008.10.25(土)—12.7(日)
- 開催期間:2008年10月25日(土)~12月7日(日)
- 休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
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料金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
- ※各種カード割引あり
( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/
小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料
写真初期から現在にいたるまで、特に20世紀においては世界の写真表現をリードした国・アメリカ。そこは、同国籍の作家はもちろん、ヨーロッパやアジアの作家にとっても重要な創造の「場」であり、「対象」でもありました。
東京都写真美術館コレクション展「ヴィジョンズ・オブ・アメリカ」は、19世紀のダゲレオタイプから現代に至るまで「アメリカ」という場の中から生み出された多種多様な表現を持つ作品を、時代によって3つのパートに分けて展示。アメリカ人以外の作家も含めて、アメリカという「場」を考えることによって、これまでになかった写真/写真史におけるアメリカの意味を問い直すことをめざしています。また、そこには、アメリカの建国以来の歴史が見て取れるだけではなく、「グローバル/ローカル」といったアメリカ文化がもつ重層性が見えてくるのではないでしょうか。さらに、日本人にとってなじみのある作品や写真家を多数ご紹介できる機会でもあり、写真ファンならずとも広く楽しめる展覧会です。
【第3部の出品予定作家】
ダイアン・アーバス、ブルース・デヴィッドソン、ロバート・フランク、リー・フリードランダー、アーヴィング・ペン、ロバート・メイプルソープ、ドゥェイン・マイケルズ、奈良原一高、シンディ・シャーマン、ユージン・スミス、杉本博司、アンディ・ウォーホル、ギャリー・ウィノグランド ほか
【第3部の見どころ】
1.路上
戦後アメリカ文化のダイナミズムは「路上」にあったのではないだろうか?ロバート・フランク『アメリカ人』、ウィリアム・クライン『ニューヨーク』のストリート写真は過去のドキュメンタリー写真の既成概念をくつがえし、現代写真のルーツとなった。現実とイメージの関係を問い直したリー・フリードランダー、路上での出会いの可能性をシークエンス写真で表現したドゥェイン・マイケルズ、ストリートで行きずりの通行人たちを動的に捉えたゲリー・ウィノグランドなど、「路上」が活気を放っていた50年代半ばから80年代までのアメリカを映し出す。
2.砂漠
西部の広大な砂漠に写真家たちは何を求め、何を見いだしたのか?砂漠の風景もまた、アメリカを象徴するヴィジョンとして写真家を魅了した。ヘンリー・ウェッセルは砂漠に人工物が点在する風景や、文明と自然の境界線に目を向けた。リチャード・ミズラックは砂漠が人間によって造り変えられ変容していく様を記録した。砂漠の原初的風景にヌードモデルという現代的な身体の美を配した篠山紀信、地球的規模で自然の畏怖を捉えた白川義員、神話的な時空間を表現した奈良原一高など、西部の砂漠が見せてくれる惑星的なスケールの景観は、日本人写真家の想像力をも大いに刺激した。
3.戦場
激動の60年代。戦場はヴェトナムにあり、アメリカ国内でも平和や自由、平等を求めるあらゆる場所が「戦場」だった。ヴェトナム戦争(1959年−1975年)ではグラフ誌『ライフ』の記者ラリー・バロウズをはじめ日本人写真家・石川文洋、岡村昭彦らが活躍した。前衛芸術家オノ・ヨーコは反戦運動を展開し、ウィリアム・ユージン・スミスは『抵抗の60年代』で反戦・反人種差別デモや伝説のロック・フェスティバル「ウッドストック」に集った若者たちを共感的な視線を向けた。

4.家
1963年、ジョン・フィッツジェラルド・ケネディ大統領が、テキサス州ダラスで暗殺された。アメリカン・ドリームを信じることのできる時代は終わりを告げ、アメリカのアイデンティティは分裂していった。写真家にも、人間の絆を確かめ、関係性を模索するように「家族」や「私生活」、「日常」「地域性」といったテーマが浮上してくる。ダイアン・アーバスは、人間のネガティブな面を「真実」として写し出し、その強烈なヴィジョンは、アメリカの内面の狂気と他者との相互理解の不可能性を気づかせた。ウィリアム・エグルストンは、南部のローカルな風景や日常のディテールを題材とし、「家」や「郊外」という表象は、そこに住む人間のアイデンティティや文明の対比を喚起させた。サリー・マンは子どもたちとの日常生活を題材に、実生活と虚構が混ざりあい、透明感のある独自の映像世界を生み出した。ナン・ゴールディンは、自身の実生活を取り巻く流動的な人間関係をテーマとし、愛と性の問題や友人たちとの関係を正面から 描き出して20世紀末アメリカ写真の寵児となった。
5.メディア
アメリカのテクノロジーがもたらすメディアの先進性は世界を変えてきた。そして映画やテレビが描くアメリカの夢と虚構は世界を魅了してきた。「メディア」という舞台で演じられ、生み出される数々のイメージがアメリカのヴィジョンとなって、20世紀から現代に大きな影響を与えてきたのである。人類史上初のアポロ月面着陸を記録したNASAの公式記録写真、アメリカの光と影を鮮やかに描き出したアンディ・ウォーホル、人間存在の闇を描き出すジョエル・ピー ター・ウィトキン、80年代アメリカ文化を象徴するロバート・メイプルソープ、シンディ・シャーマンら、現実と虚構が織りなす20世紀アメリカの夢と記憶をたどる。
この展覧会では、アーノルド・ニューマンが撮影したホワイトハウスの前で微笑むジョン・F・ケネディ第35代アメリカ合衆国大統領(ケネディ大統領)や、ブルース・デヴィッドソンによるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア(キング牧師)の姿も展示されています。公民権運動の頂点である「ワシントン大行進」を捉えたこの作品は、キング牧師がパレードの中心となり全米から集まった25万人もの人々とともに力強く行進する姿がみられます。奇しくもバラック・オバマ氏が第44代アメリカ合衆国大統領に選ばれ、アメリカが変革を選んだ今、アメリカの歴史を写真で振り返り、アメリカがどこへ向かっていこうとしているのかを考えるきかっけとなることでしょう。
□主催:東京都 東京都写真美術館
□協賛:凸版印刷株式会社
□協力:フォト・ギャラリー・インターナショナル/新潮社
関連イベント
- 講演会
- 2008年11月3日(月・祝) 14:00~ 終了致しました
「60年代から70年代へ:ソーシャル・ランドスケープとニュー・ドキュメンツ」
講師:戸田昌子(武蔵野美術大学非常勤講師)/中川裕美(東京綜合写真専門学校非常勤講師)
会場:1階創作室
定員:50名
入場無料(当日午前10時より展覧会チケットをお持ちの方へ入場整理券を配布します。) - フロアレクチャー
- 2008年11月14日(金) 16:00~ 終了致しました
2008年11月28日(金) 16:00~ 終了致しました
担当学芸員による展示解説を行います。
(当日有効の展覧会チケットをお持ちの方はどなたでもご参加いただけます。) - 展覧会公式ガイドブック
展覧会図録
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「メモリーズ・オブ・アメリカン・ドリーム」
今収蔵作品展の公式ガイドブックです。ダゲレオタイプから、スティーグリッツ、ロバート・フランクなど、時代背景や写真史的位置づけを学芸員が解説しております。