本日は開館しております(10:00-20:00)

神奈川県 愛甲郡 清川村宮ヶ瀬1983
この写真は1983年に撮影したものですが、その後の自分の作品の元になる最初の写真です。無機質なコンクリートが生き物のようにうずくまり、こちらを見据えているような、まるで「撮らないの?」とささやいているようでした。

2F 展示室

ランドスケープ 柴田敏雄展

2008.12.132009.2.8

  • 開催期間:2008年12月13日2009年2月8日
  • 休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)※12月29日(月)~1月1日(木)は年末年始休館
  • 料金:一般 700(560)円/学生 600(480)円/中高生・65歳以上 500(400)円
  • ※各種カード割引あり

( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/ 小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料

柴田敏雄は東京芸術大学・同大学院修士課程終了後、ベルギーの王立アカデミー写真学科入学。留学を機に写真を撮り始め、帰国後の1980年代後半に、ダムやコンクリートに覆われた造成地など人工的に変容された風景を独特の視点で捉えた写真で注目されました。
'92年、その年に写真界に一番影響を与えた新人に贈られる木村伊兵衛写真賞を受賞。大型の8×10カメラを使い、克明に表現された柴田の写真は、客観的に普遍的な風景を捉えているように思われます。しかしその中に日本ならではの風土や社会問題を想起させ、見るものに強い印象を与えてきました。静謐で抑制された写真から、まず自然の中に組込まれている人工物の美しさに目を奪われ、その後に自然に対する警鐘を感じ取ることができます。
'90年代後半からはアメリカ各地のダムも撮影しており、その対象は日本国内だけではなく拡がりを見せています。特に地名などがすぐに分かるようなものは一切写り込んでいないにもかかわらず、それぞれの国や地域の微細な差異が、あたかもそれぞれの土地の抱える問題として、凝視すればするほど浮き出てくるように感じられるでしょう。
国内だけではなく海外の多くの美術館にも作品が収蔵されているなど評価が高いにもかかわらず、これまで国内の美術館においてその軌跡を辿ることができる機会はありませんでした。今回は東京都写真美術館と作家が収蔵している作品を中心とし、近作のカラー作品の展示も併せて行い、現時点での柴田の活動を振り返ります。

【展示構成】
この展覧会では、1980年代~現在までに発表された作品を、作品のシリーズではなく、「カラー」「夜景」「モノクロ」という3つのタイプに分けてご紹介します。

○カラー(24点)
モノクロには向いていないからという理由で落としてきた風景に気づき、3年ほど前から始めたカラー作品の制作。
100cm×125cmの特大プリント4点を含めた最近作をご紹介します。
○夜景(15点)
夜によって余分なものが消え光に浮かびあがった世界。柴田作品ならではトーンの美しさが堪能できる作品群です。
○モノクロ(35点)
柴田氏自身が理想の写真の質感に一番近い、と言うモノクロの大型写真を中心に展示します。



Grand Coulee Dam, Douglas County, WA 1996年
1993年頃シカゴ現代美術館からコミッションワークの話をいただきました。資金、そして時間をいただき、自由に撮影できる夢のようなプロジェクトでした。しかし実際撮影するとなるとさまざまな現実にぶつかりました。地形の違い、距離感、気候、とくに湿度など微妙な感覚の違いから今までの撮影のやり方そのままでは通用しないと感じました。地平線のない日本と広いアメリカの風景の違い。そんななかで撮り方をいろいろと工夫し、ようやく得た作品です。これはダムの上から下を覗いた眺めですが、雲のようにも見える水面をただよう水の泡には、何か私が知っているアメリカの景観とは違う空間を感じました。私はこの作品によって、なにかもうひとつ新しい視点を私自身に得たような気がしています。


 

高知県 土佐郡 大川村 2007年
早明浦ダムに流れ込む吉野川にかかっている橋です。1月、冬の陽の中、モヤがかかっていて赤い橋が浮かび上がっていました。もう少しで山陰に日が落ちてしまいそうでした。それで急いでカメラをセッティングし撮影しました。あまりあれこれと構図を探ることはせず、シャッターを切りました。この作品も撮影時にはさほど気になるイメージではありませんでしたが、プリントしてみると背景の山がとてもフラットで書割のような感じです。そこから赤い橋が突き出ているように見えて視覚的にとても不思議な作品になりました。

青森県 平川市 2006年
畑や農業の風景などは、日本で写真を撮り始めた80年代には数多く撮っていましたが、今までにあまり発表してきませんでした。おそらく田園風景は自分にとっては情緒的すぎると感じていたからでしょう。田んぼや畑などは自然の風景とみなされがちですが、見方を変えれば、人間が自然を利用するために手を入れた原始的なもの、土木の根源ともいえると思います。もちろん撮影時にはそういうことはあまり考えていません。

※作品図版の下でご紹介している文章は、柴田氏本人が語るアーティスト音声ガイドの原稿より抜粋しています

【アーティスト音声ガイドのご案内】
本展では、柴田敏雄氏自身が語る展覧会解説音声ガイドをご用意しております。
写真を撮り始めた頃から現在まで、活動の軌跡と制作の秘密、撮影の裏話など作家自身が語ります。
(企画・制作:よみうりアート/監修:東京都写真美術館)
所要時間:約40分
料金:500円
貸出場所:2階展示室前の貸出カウンター



山梨県北杜市須玉町 2007年


--- 柴田敏雄略歴 ---

1949年 東京に生まれる
1974年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画専門課程油画専攻(修士課程)修了。
1975年 ベルギー文部省より奨学金をうける。同ゲント市、王立アカデミー写真科入学、写真を始める。
1979年 帰国
1992年 第17回木村伊兵衛写真賞受賞

□主催:財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館/読売新聞東京本社/美術館連絡協議会
□助成:芸術文化振興基金
□協賛:ニコン/ニコンイメージングジャパン/ライオン/清水建設/大日本印刷
□協力:双ギャラリー/ツァイト・フォト・サロン/フォトグラファーズ・ラボラトリー/イマジン・アートプランニング

関連イベント

新春アーティストトーク
2009年1月2日(金) 14:00~  終了致しました
2009年1月3日(土) 14:00~  終了致しました
解説 : 柴田敏雄
担当学芸員によるフロアレクチャー
2008年12月19日(金) 14:00~  終了致しました
2009年1月2日(金) 14:00~  終了致しました
2009年1月16日(金) 14:00~  終了致しました
2009年1月30日(金) 14:00~  終了致しました
2009年2月6日(金) 14:00~  終了致しました
担当学芸員による展示解説を行います。
※当日有効の展覧会チケットをお持ちの方は、どなたでもご参加いただけます。
講演会(会場:1階創作室)
2008年12月23日(火・祝) 14:00~16:00 【出演】 飯沢耕太郎(写真評論家)× 柴田敏雄  終了致しました
2008年2月1日(金) 14:00~16:00 【出演】 光田由里(渋谷区立松濤美術館学芸員)× 柴田敏雄  終了致しました
※ 当日10:00より本展覧会半券をお持ちの方に1階受付にて整理券を配布します

展覧会図録

図録 旅行読売出版社 ¥2,940(税込)
今展覧会に合わせて、発刊された写真集です。初期の作品から近年発表したカラー作品まで78点を収録し、これまでの活動の軌跡を振り返ります。展示作品も全て掲載されております。

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