本日は開館しております(10:00-18:00)


チェコスロヴァキア・ラジオ局の防衛
Josef Koudelka, from the Aperture monograph Invasion 68: Prague, © 2008 Josef Koudelka/ Magnum Photos

2F 展示室

ジョセフ・クーデルカ プラハ1968

この写真を一度として見ることのなかった両親に捧げる

2011.5.147.18月・祝

  • 開催期間:2011年5月14日7月18日月・祝
  • 休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
  • 料金:一般 800(640)円/学生 700(560)円/中高生・65歳以上 600(480)円
  • ※各種カード割引あり

( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/ 小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料

当館では、フォト・ジャーナリズム史に伝説として名を刻み、現在もパリとプラハを拠点に世界的な活動を続けるジョセフ・クーデルカの展覧会を開催します。

1938年、チェコスロバキア(現在のチェコ)に生まれたジョセフ・クーデルカは、1968年8月に起こったワルシャワ条約機構軍のプラハ侵攻「チェコ事件」時、団結して兵士に抵抗した市民の攻防を写真におさめました。しかし、“プラハの春”と呼ばれる変革運動が終焉を迎え、ソ連が導く共産主義へと「正常化政策」が敷かれる中では、これらの写真は国家から許される記録ではありませんでした。

そこで、これらの写真はプラハの写真史家とスミソニアン博物館の学芸員等の手によって秘密裏にアメリカへ持ち出され、当時のマグナム会長エリオット・アーウィットを経て、翌1969年「プラハの写真家」という匿名者によるドキュメントとして発表。写真家の名を伏せたまま、ロバート・キャパ賞を受賞しました。クーデルカがこの写真の作者であると名乗りを上げることができたのは1984年、彼の父親がチェコで亡くなった後のことでした。東西に分断された欧州や冷戦下の政治的状況を顕したこれらのエピソードは、20世紀の伝説となり、世界中のジャーナリストたちによって語り継がれています。

本展覧会では、クーデルカが2008年に出版した『Invasion  68  Prague』より173点(予定)を出展。突然、街を埋め尽くした戦車に人力で立ち向かったプラハ市民の勇気ある記録をクーデルカの臨場感溢れる写真から振り返り、当時の市民に起きたことをいかに自身の身に引き寄せ、私たちの未来の歴史の糧とするかを検証するものです。

 

<展示構成>

Josef Koudelka, Invasion 68: Prague, Aperture, 2008より173点(予定)
Josef Koudelka/Magnum Photos, from the book Invasion 68: Prague (Aperture, September 2008)

 

<作家略歴:ジョセフ・クーデルカ>
1938年チェコスロヴァキアのモラヴィアに生まれ。14歳の頃、自ら摘んだ野いちごを売り歩いたお金で6×6のカメラを買い、初めて写真を撮った。その後、プラハ工科大学で工学を専攻し、卒業後の61−67年、プラハやブラティスラヴァで航空エンジニアとして働いたが、その間も独学で写真を撮り続けていた。
1961年、月刊誌『劇場』に定期的に写真を掲載することになり、芝居の写真を撮り始めた。その後、ビハインド・ザ・ゲート劇場のディレクターからも声が掛かり、以来、舞台写真は初期の代表作となった。そして、この頃から、後の代表作「ジプシー」となる、ロマをテーマに撮り始めた。
彼の初期作品は、「ジプシー」「エグザイル」等の表現に繋がるようなシンプルに被写体を捉える視点や、光と影をグラフィカルに構成する実験的なものまで、独自の手法で制作されていた。
1967年、クーデルカは航空エンジニアの職を辞し、写真家の道を選ぶ。同年、「劇場」シリーズが評価され、チェコスロヴァキア美術家連盟年度賞を受賞し、個展を開催した。ここで初めて展示された「ジプシー」は、生活そのものに密着する圧倒的な取材力と、無駄なく被写体に迫る表現によって高い評価を得る。
今回展示の「プラハ1968」は、ルーマニアでのロマの取材を終えた1968年8月21日に、プラハに帰郷した際におこった「チェコ事件」をドキュメントした作品である。


“Invasion 68: Prague” is organizes by Aperture Foundation in collaboration with Josef Koudelka, and co-produced with Magnum Photos. This exhibition is made possible, in part, by generous support from Mark and Elizabeth Levine.
Additional support provided by HP and Coloredge.

 

 

■■本展をご覧になったさまざまな方よりメッセージをいただいています■■

 

 

ひとびとの脳裏に刻み付けられてきたあまりに有名なイメージ以外に
これほどの写真群があったことに驚愕した。
ひとりの写真家が「チェコ事件」に遭遇していなかったら、
この事件の歴史上の意味合いまでも違っていただろう。
外山俊樹(『アエラ』フォトディレクター)


すべての眼差しは意志である、というあたりまえの事実がここにある。
渋谷慶一郎(ATAK/音楽家)


2011年、「チェコ事件」は写美の展示室で起きている。
クーデルカの目を借りた私は時空を越え、
戦車が揺るがす石畳の上に立つ1人のプラハ市民となった。
写真家の体験が肌を通してリアルに蘇る。
片岡英子(『ニューズウィーク日本版』フォトディレクター)


突然街におそってきた戦車に丸腰で抵抗する市民の姿。
このごろ世界のあちこちで起こっていることを連想しますが、
巨大権力の前で人々があきらめてはならない、と痛感しました。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)


クーデルカの作品には強烈な隠し味がある。
アドレナリンを放出しきってしまった後にしばしば訪れる、
退廃と一種官能的な匂い、それが今回も彼が切り取ったプラハの春の
歴史的無常と絡みあい、見るもののハートを揺さぶり続けるのだ。
Q.サカマキ(フォトグラファー、WPP07受賞者、NY在住)


彼は僕が写真好きになった、きっかけの人だ。
1968年、僕が中学生だった頃、ソビエトのチェコ侵攻に衝撃をうけた。毎日、新聞や
雑誌の写真を切り抜きスクラップをした。
彼の写真と知らずに。
それは僕にとり、世界と写真の二つを、初めて体験する大事件だった。
大人になり、偶然最初に買ったのがクーデルカのフォトポシェで、その時やっと僕が
スクラップしていた写真家の正体をしるようになる。中に、彼の靴を写した写真が
あったことを不思議に思っていた。
フランク・ホーヴァットの著書『写真の真実』のインタビューで、「毎朝起きて、撮
るものがない時は、自分の靴を撮るようにしているんだ」と彼が答えているのを読ん
で、その時、彼の写真の秘密がわかったような気がして、ますます彼に惹かれた。彼
はエグザイルなのだ。作品の『ジプシー』のシリーズ が僕の分身となっていった。
彼が日本に来た時、幸運にもインタビューできた。やっと会えた気がした。でもその
時、彼自身もインタビューの内容を持ちかえれるよう、レコーダーを2つ用意してく
れと言われた。彼は今だ亡命者だった。しかしその後、パリフォトの会場で彼の、楽
しげな酔っぱらった姿を見た時、ボヘミアンの幸福と言う言葉が浮かんだのだった。
彼は僕にとって、これからも特別な人であり続けるだろう。
後藤繁雄(編集者・G/Pギャラリーディレクター・京都造形芸術大学教授)

 

「悪いけど、1968年に日本から9000キロも離れたプラハで何がおこったかなんて知るわけないじゃん」としか答えられないアタシがいて、「プラハの春? 知ってる知ってる!」とか言いながら、古い映画かワルツの曲名かと答える無知なキミがいる。しかし、もはや歴史や地理の知識などいらないはず。3.11以後の日本人はクーデルカの写真を見れば、その圧倒的な理不尽とどうしようもない混乱にたちまち鳥肌が立ち、戦慄するに違いないから。
D[di:](作家・イラストレーター)



NHK教育テレビ「日曜美術館」のアートシーン(展覧会情報)で
「ジョセフ・クーデルカ プラハ1968」展が紹介されました。
(2011年5月22日(日)の放映にて)


□主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館/朝日新聞社 
□後援:チェコセンター/チェコ共和国大使館
□協力:平凡社/マグナム・フォト東京支社/エールフランス航空/ウェスティンホテル東京 □協賛:東京都写真美術館支援会員

関連イベント

対談:小森香子(詩人)×小森陽一(日本文学者)
2011年5月21日(土) 14:00~15:30  終了致しました
本展覧会カタログにもご執筆いただいた小森陽一氏は1965 年(当時12歳)までプラハで暮らしていらっしゃいました。チェコ事件の印象と日本人はそれをどう受け止めたかを、共にこの街で生活した母・小森香子さんと対談していただきます。
会場:東京都写真美術館 2階ラウンジ
対象:ロビーで開催いたしますので、どなたでもご参加できます。
着席:約50名の方には着席できるよう椅子をご用意いたします。
開場:13:45より、自由席。
レクチャー:ホリー・ペトル(チェコセンター所長)
2011年6月12日(日) 14:00~15:30  終了致しました
ホリー・ペトル氏を迎えてプラハの街の歴史、魅力、チェコ人気質などについて幅広くお話していただきます。
会場:東京都写真美術館 2階ラウンジ
対象:ロビーで開催いたしますので、どなたでもご参加できます。
着席:約50名の方には着席できるよう椅子をご用意いたします。
開場:13:45より、自由席。
※レクチャーの中でペトル氏がご紹介したチェコセンターのイベントについてはこちらをご覧ください
担当学芸員によるフロアレクチャー
2011年5月14日(土) 14:00~  終了致しました
2011年5月27日(金) 14:00~  終了致しました
2011年6月10日(金) 14:00~  終了致しました
2011年6月24日(金) 14:00~  終了致しました
2011年7月8日(金) 14:00~  終了致しました

※担当学芸員による展示解説を行います。
※本展覧会の半券(当日有効)をお持ちの上、会場入り口にお集まりください。

レクチャー:小熊英二 (社会学者、慶應義塾大学教授)
2011年6月26日(日) 15:00~16:30  終了致しました

1968年のチェコでの出来事を、現代に生きる私たちはどのように捉え、語ることができるのでしょうか。
戦後日本やナショナリズムについて研究されている小熊英二さんに、当時の世界情勢と日本社会の状況をレクチャーしていただきます。
会場: 東京都写真美術館 2階ラウンジ
対象: ロビーで開催いたしますので、どなたでもご参加いただけます。
約50名の方には着席できるよう椅子をご用意いたします。(先着順)

 

小熊英二(おぐまえいじ)
1962年東京生まれ。出版社勤務を経て、1998年東京大学教養学部総合文化研究科国際社会学専攻大学院博士課程終了。現在、慶應義塾大学総合政策学部教授。
『単一民族神話の起源』(新曜社、1995年)でサントリー学芸賞、『〈民主〉と〈愛国〉』(新曜社、2002年)で第57回毎日出版文化賞第2部門、第3回大沸次郎論壇賞、受賞。当時の膨大な資料に当たった『1968〈上〉』『1968〈上〉』(新曜社、2009年)で大きな反響を呼ぶ。著書多数。

展覧会図録

ジョセフ・クーデルカ プラハ侵攻1968
展覧会公式カタログです。和訳の差込み版には「プラハ市民の眼差しの先に」小森陽一(和英)、本書和訳(阿部賢一 立教大学文学部准教授)、担当学芸員の展覧会テキスト(和英)を掲載しています。A4判変形 296ページ 発行:平凡社

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