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東京都写真美術館 TOKYO PHOTOGRAPHIC ART MUSEUM

開館時間 10:00-21:00

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本日は開館しております(10:00-21:00)

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「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」展
Ⅱ-1.転換期ークリティカル・アート潮流とともに 1990年代以降
作品紹介

ユリタ・ヴイチク[1971‐]
《芋の皮剥き》(ヴィデオ作品 2001)
一人の女性がひたすら芋の皮剥きをしています。これは作家本人が美術館の展示室で行なったパフォーマンスで、その記録映像が同じ空間に作品として展示されました。 ポーランドにおいて芋は主食として食べられてきた食材です。毎日、芋の皮を剥くのは、女たちの仕事でした。その行為が、家庭というパーソナルな空間から離れ、美術館というパブリックな場所で行われることで、女性に課せられてきた役割や立場を露わにし、観る者に問いかけているといえるでしょう。

ユリタ・ヴイチク Julita Wójcik 《芋の皮剥き 》 2001年 ザヘンタ国立美術館(ワルシャワ)所蔵作品 Peelin g Potatoes, 2001 Work from Zachęta National Gallery of Art collection in Warsaw

ズザンナ・ヤニン[1961‐]
《闘い》(ヴィデオ作品 2001)
流血する場面もあるほど激しく打ち合うボクシングの試合を繰り広げるのは、作家のズザンナ・ヤニン本人と男性のプロ・ボクサーです。このパフォーマンスは、美術館の展示室にリングを設営し、この映像を撮影するために無観客の状況で行われました。ヤニンは数ヶ月のトレーニングを積んでこの試合に臨んだといいます。映像には試合の勝敗などの帰結はなく、打ち合いのシーンはループして繰り返されます。 本作が発表された個展のタイトルが「私も貴方を愛している 」(ザヘンタ国立美術館 2001)であることから、この《闘い》がドメスティックな閉鎖された環境における、愛し・愛される関係の間で行われている争いを示唆していると推測することができるでしょう。 しかし、真っ白いリングや匿名性の高い登場人物たちによる激しい試合をどのように解釈するかは、見る側にゆだねられています。

ズザンナ・ヤニン Zuzanna Janin 《闘い》 2001年 Fight, 2001 Courtesy of Zuzanna Janin Studio and lokal_30, Warsaw

カタジナ・コズィラ[1963‐]
《罰と罪》(ヴィデオ作品 2002)
人気のない空き地で、奇妙なマスクをつけた者たちが重機や車両などを標的に武器で爆撃し、破壊しています。これは映画やフィクションではなく、実際の火器を使い、特定の場所で、遊興として破壊行為をする人々を密着取材して制作した映像作品です。
彼らは全員男性ですが、顔をあかさないよう、この取材のためにマスクをつけています。そのマスクは、女性グラビアモデルの顔をかたどったものであり、暴力とエロティシズムとの繋がりを示唆しているようです。
しかし、男性だけが暴力や破壊行為に快感を感じるわけではなく、女性にも少なからずそういった側面はあるはずです。マッチョで男性的な価値観は誰に中にもあり得るものであり、本作はそういった人間の本質をあぶり出そうとした作品であるといえるでしょう。
作家のカタジナ・コズィラは、自ら男性に扮装して公衆浴場の男風呂に潜入し、隠し撮りで映像作品を制作するなど、大胆な制作手法で知られています。また、文学史や美術史を参照する手法も度々採用しており、本作の映像には最も有名な戦争絵画の一つであるゴヤの「1808年5月3日」を想起させるシーンを登場させています。また、作品名はロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーの『罪と罰』に由来するといいます。

カタジナ・コズィラ Katarzyna Kozyra 《罰と罪》 2002年 Punishment and Crime, 2002 Courtesy of the artist

ヨアンナ・ライコフスカ[1968‐] 
《バシャ》(ヴィデオ作品 2009)
タイトルの「バシャ」は、Barbara(バルバラ)という名前のポーランド女性に対して使われるポピュラーなニックネームです。作家のヨアンナ・ライコフスカ(1968-)は、認知症を患いながら2006年に亡くなった自身の母親バシャになりきって、パジャマとスリッパという姿で町や川の中を徘徊し、その記録映像をもとに作品を制作しました。映像の中には、作家によるパフォーマンスだとは気づかず、一人の女性に話しかけられシーンが登場します。
「大丈夫? 私のこと覚えてる? 一緒にコーヒーを飲みましょう」と。
そのような善意の人々によって、“バシャ”はもとの施設に戻されますが、彼女は再び病院を抜け出し、徘徊は繰り返されるのです。
生前にもっと寄り添うことができたならという悔いや自責の念、そして母の心を理解したいという作家の思いが、作品から伝わってきます。
ヨアンナ・ライコフスカは、ポーランドを代表する現代作家の一人です。パブリックな場所を使った大規模なインスタレーション作品で知られていますが、ヴィデオや写真を使った作品も手がけてきました。

ヨアンナ・ライコフスカ Joanna Rajkowska 《バシャ》 2009年 Basia, 2009 Courtesy of the artist and l'étrangère Gallery, London Photo: Marek Szczepański

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