本日は開館しております(10:00-20:00)

ウジェーヌ・アジェ《日食の間》1912年  ゼラチン・シルバー・プリント
3F 展示室

TOP Collection
アジェのインスピレーション

ひきつがれる精神

2017.12.22018.1.28

  • 開催期間:2017年12月2日2018年1月28日
  • 休館日:毎週月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌平日休館)、2017年12月29日(金)~2018年1月1日(月・祝) ※年始特別開館 2018年1月2日・3日は11:00~18:00開館 ※1月8日(月・祝)は開館し、翌9日(火)は休館
  • 料金:一般 600(480)円/学生 500(400)円/中高生・65歳以上 400(320)円  ※ ( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引(ご利用案内をご参照ください)/ 小学生以下、都内在住・在学の中学生および障害をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料/当館年間パスポートご提示者無料(同伴の方1名様まで無料) ※1月2日(火)は観覧無料、3日(水)は2割引

本展覧会はフランスの写真家、ウジェーヌ・アジェ(1857-1927)が後世の写真表現にどのような影響を与えたかについて考えます。当館所蔵の作品と写真集などの資料によって、アジェ自身の作品とアジェ以降の写真家たちの際立った作品を中心に、その輪郭を浮び上がらせようとするものです。
ウジェーヌ・アジェは19世紀末から20世紀初頭にかけて、パリとその周辺を捉えた写真家です。1898年、41歳の時から30年間にわたって8,000枚以上の写真を撮影し、歴史的建造物や古い街並み、店先や室内、看板、公園、路上で働く人々など、近代化が進み、消えゆく運命にあった「古きパリ」を体系的に記録し、図書館や美術館、博物館などの公的機関や画家、建築家等のアーティストたちに販売しました。その顧客にはレオナール・フジタもいます。
アジェは孤高の写真家と称されることも多く、ひとり黙々と撮影に取り組みましたが、亡くなる2年前頃よりにわかに注目されはじめます。偶然にも、同じ通りにスタジオを持っていたマン・レイがアジェの写真からシュルレアリストと共通するものを感じ取り、『シュルレアリスム革命』誌に取り上げたのです。この頃から、アジェの作家性にスポットライトが当たりはじめました。
さらに、当時、マン・レイの助手をしていたベレニス・アボットによって、アジェの存在は世界に波及していきます。アジェの死後、散逸の危機にあったプリントやガラス乾板を、もうひとりの貢献者であるニューヨークのギャラリスト、ジュリアン・レヴィの助けを借りて買い取り、アメリカで広めていったのです。その後、写真史家や美術館のキュレーターたちによって研究が進められ、アジェは近代写真の先駆者として位置づけられていきます。
しかしながら、アジェはいまだに謎めいたところのある写真家です。ニューヨーク近代美術館写真部門のディレクターだったジョン・シャーコフスキーは「ウジェーヌ・アジェ[・・・]、その人物について、我われには、わずかに信頼できる一握りの事実があるだけだ。それらはおおよそ不透明であいまいなもので、研究者たちは、そのことをきびしく穿鑿(せんさく)してきたが、そのほとんどは分からずじまいであった」(ジョン・シャーカフスキー「序文」『ウジェーヌ・アジェ写真集』[原信田実訳、岩波書店、2004]と、かつて述べているように、生前のアジェ自身のコメントがあまり残されていないこともあり、彼の作品について多くの人たちが様々な想像を巡らせ、その真実に迫ろうとしてきました。
アジェに憧憬を抱き、手本としてきた写真家たちは後を絶ちませんが、彼らがアジェの写真に見出したものはいったいなんだったのか。本展は、アジェの同時代の写真表現と、アジェの先達となる写真家の作品も併せて展示し、紐解こうとするものです。

出品作家
ウジェーヌ・アジェ、マン・レイ、シャルル・マルヴィル、アルフレッド・スティーグリッツ、ベレニス・アボット、ウォーカー・エヴァンズ、リー・フリードランダー、ジャン=ルイ・アンリ・ル・セック、荒木経惟、森山大道、深瀬昌久、清野賀子

作品158点 および図書資料


ウジェーヌ・アジェ《ショワジー館、バルベット通り8番地》 1901年 鶏卵紙


ウジェーヌ・アジェ《フルーリー街76番地、シャペル大通り》1921年 ゼラチン塩化銀紙 (P.O.P)


ウジェーヌ・アジェ 《トリニ館、ケ・ダンジュ通り11番地》 1902年 鶏卵紙


ウジェーヌ・アジェ 《(樹)》 1910-20年 油彩/キャンパス(厚紙に貼付)


ベレニス・アボット 《ウォーター・フロント》〈変わりゆくニューヨーク〉より 
1938年 ゼラチン・シルバー・プリント


深瀬昌久 《襟裳岬》〈鴉〉より 1976年 ゼラチン・シルバー・プリント


荒木経惟 〈写真論〉より 1988-89年 ゼラチン・シルバー・プリント


ウォーカー・エヴァンズ 《写真家のウィンドウディスプレイ、バーミンガム洲、アラバマ》 1936年 ゼラチン・シルバー・プリント


森山大道 《ポスター(中野)》〈東京〉より 1968-80年 ゼラチン・シルバー・プリント


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確かにぼくは、ウィリアム・クラインやアンディ・ウォーホルの作品にも強く衝撃を受けたけど、それらはいずれも出会い頭のインパクト、つまりヤラレタ!ってものですね。でもアジェの写真はなんかこう、いつの間にかひっそりと、ぼくの身辺に寄りそってくる。(中略)アジェの残した膨大な量の写真全体を見渡せば、その構図のしたたかさや街をとらえる視線のしぶとさに脱帽したくなりますよ。つまりアジェと写真との邂逅は決定的だったと思います。アジェの写真は(中略)、ぼくにとっては、限りなく蠱惑的(こわくてき)な存在です。
(森山大道『東京都写真美術館ニュース20号』1998年より抜粋)
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いまアッジェとエバンスとどっちが好きか、イイかと、二人の写真集をさがしたのだがエバンスのしか見つからない。たしかアッジェは三冊あったはずだ。誰かに貸したままなのかな。(中略)んでよー、しかたなくエバンスだけを見る。うーん。ちょっとものたりない。<情交>してない。<私情>がない。やっぱ<私情>がなくちゃね。やっぱりアッジェだね。アッジェ さん、エバンスなんかと比べちゃってごめんなさい。格が違うもんね。
(荒木経惟『東京は、秋』2016年、 P187『アサヒカメラ』1983年7月増刊号の引用より抜粋)
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□主催:東京都 東京都写真美術館

関連イベント

関連トーク「ウジェーヌ・アジェの写真を紐解く」
2017年12月8日(金) 18:00~19:30 横江文憲(写真評論家)  終了致しました
会場:東京都写真美術館 1階スタジオ
定員:50名
※当日10時より1階総合受付にて整理券を配布します。
関連トーク「ウジェーヌ・アジェの写真集をめぐって」
2018年1月5日(金) 18:00~19:30 金子隆一(写真史家)  終了致しました
会場:東京都写真美術館 1階スタジオ
定員:50名
※当日10時より1階総合受付にて整理券を配布します。
担当学芸員によるギャラリートーク
2017年12月15日(金) 14:00~  終了致しました
2018年1月5日(金) 14:00~  終了致しました
2018年1月19日(金) 14:00~  終了致しました
会期中の第1、第3金曜日14:00 より、担当学芸員による展示解説を行います。 展覧会チケット(当日消印)をご持参のうえ、
3階展示室入口にお集まりください。


*事業はやむを得ない事情で変更することがございます。

展覧会図録

『アジェのインスピレーション ひきつがれる精神』
テキスト:鈴木佳子(当館担当学芸員)、再録:横江文憲(写真評論家)
発行:東京都写真美術館、A4判変形、216頁、1,900円(税込)

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