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「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23」音声ガイド(全文テキスト)
「ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23」出品作家5名に、今回の展示について解説いただきました。
全文テキストでお読みいただけます。
■野村 在|Nomura Zai

野村在です。今回は《上へ》と《バイオフォトンはかくも輝く》という2つの作品を展示しています。
中央にある《上へ》では、墓石を一本ずつ上へ積み上げていきます。開館中、看視員が墓石を引き抜き、最上段へと積み足していき、崩れたらまた全てを積み直します。
その周囲にある《バイオフォトンはかくも輝く》では、すでに亡くなった人たちの古い写真を燃やし、その時に生まれる光を撮影してガラスに定着させています。
墓石を積み上げることと、写真を燃やして光に変えること、どちらもそこにあった人や記憶が失われた後に、果たして何が残るのかということから生まれています。中央の墓石が少しずつ上へ伸びていく時間と、その周囲に残された光をぜひ一緒にご覧ください。
■苅部 太郎|Karibe Taro

苅部太郎です。今回展示している作品《あの海に見える岩を、弓で射よ》では、AIというマシンに幻の風景を作らせています。
AIは人間の脳神経回路網を模倣して作られているので、人間と似た認識の振る舞いをすると気がつきました。その振る舞いを可視化する方法として、まずテレビの受信部を接触不良にしてグリッチノイズを発生させ、ブロックノイズだらけになった画面をカメラで撮影しました。その画像を回転、トリミングして、元々何のイメージだったのかわからなくし、生成AIの風景写真認識システムに読み込ませました。
よくわからない複雑な情報を前に、マシンは無理やり風景をでっち上げます。このようにマシンの認識システムを攪乱することで、人間とAIに共通する見立ての働きを引き出し、意味を見出そうとする人間の認識の過程や、マシンから新たなイメージが生成される可能性を探っています。目の前の複雑でランダムな情報を前にして、人間は意味を紡いできました。岩肌のヒビや凸凹を利用して洞窟壁画が生まれ、星と星をつないで星座が生まれました。人間が太古から持つこの見えないものを想像する力が、この世界を豊かにするし、思い込みで人を傷つけているのです。
■市田 小百合|Ichida Sayuri

市田小百合です。今回は空席というタイトルの作品を展示しています。日本の少子化や人口減少を背景に、私自身が育った新潟県を巡り、閉校し建物だけが残された学校を題材にした作品です。
それぞれの校舎を様々な角度から撮影し、その写真を一度解体してコラージュとして新しい形に再構成しています。写真は、紙ではなく、学校を象徴する黒板にスクリーンプリントで直接印刷しています。
また、展示空間には、同じ新潟県内の現在も使われている小学校で録音した子供たちの声や、学校の環境音を使ったサウンドも取り入れています。かつてそこにあった時間と、今はそこにいない子供たちの気配、その両方を感じながら作品を見ていただけたらと思います。
ぜひ黒板の表側だけではなく、裏側に手書きで記された学校の情報や座標、そして展示空間に流れる音にも注目していただけたら嬉しいです。
■藤倉 麻子|Fujikura Asako

藤倉麻子です。本作は《4 Tales of Open Sunrise City》という2面の映像作品と、それに関連するベンチや、平面作品や小プリント群などの立体、立体平面から構成しているものです。
Open Sunrise Cityというのは架空の都市の名前なんですけども、6月に東京駅近くのオフィスビルのエントランスにパブリックアートを設置した際に初めて考えた都市の名前です。今回は、そのパブリックアートの続編というか、新規に制作したものを含めて新しく展開したものになっています。
映像の中には、実写の風景と抽象的なCG映像、両方が出てくるのですが、実写は、東京でよく目にするオフィスビルなどの建設現場で使われている建築資材や、その建築資材のさらに原材料となっているものの採掘現場、製造現場などが東京近郊にあるんですけども、そういうところで撮影させていただいた素材です。
実際に現代の東京を形作っているビルの元となるような風景に、ちょっとずれた近未来というか、パラレルワールドというか、どちらも少し違うんですけども、架空の都市のSF的なフィクションを重ねることで、何か、新しい広がり、接続するポイントみたいなものが生まれないかなと思って制作しているものです。
■橋本 麦|Hashimoto Baku

映像作家の橋本麦です。今回は《Milling Stop-Motion (tentative title)》というタイトルで、コマ撮りアニメーションを公開制作します。
この映像は、イギリスの電子音楽家のマックス・クーパーとのコラボレーションで、だいたい3分間ぐらいのミュージックビデオを最終的には作るんですけれども、今回その映像の中で取り上げるのがフライス盤と呼ばれる工作機械です。
この工作機械というのは、動く回転刃を好きな形に動かすことができて、素材をいろんな形に削り出すことができます。そういう装置を使って、木とかアルミとか、あるいは発泡スチロールとか、いろんな素材の塊っていうのを削り出して、その断面がどんどん変化していく、そのプロセスでアニメーションを作っていきます。
見どころとしては、おそらくこういう手法ではあるので、なかなか一筋縄ではいかないと思うんですね。機械が壊れちゃったりとか、なんか思っていたような映像が撮れなかったりとか、あるいはその撮っている中で新しい撮り方っていうのを思いついたりとか、なんかそういうこう、しっちゃかめっちゃかさというか、行き当たりばったりな感じ、ぐちゃぐちゃした感じというのを見届けていただけたらなと思っています。
すべて 撮影:新井孝明
■音声ガイド(TOPMUSEUM Podcast)
Spotify: https://open.spotify.com/show/3qnmDYD709yx0BdJdvhqRK?si=6d99f348ab8e4a22
ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23
2026年9月30日(水)~2027年1月17日(日)
東京都写真美術館 3F展示室
https://topmuseum.jp/exhibition/5423/
全文テキストでお読みいただけます。
■野村 在|Nomura Zai

野村在です。今回は《上へ》と《バイオフォトンはかくも輝く》という2つの作品を展示しています。
中央にある《上へ》では、墓石を一本ずつ上へ積み上げていきます。開館中、看視員が墓石を引き抜き、最上段へと積み足していき、崩れたらまた全てを積み直します。
その周囲にある《バイオフォトンはかくも輝く》では、すでに亡くなった人たちの古い写真を燃やし、その時に生まれる光を撮影してガラスに定着させています。
墓石を積み上げることと、写真を燃やして光に変えること、どちらもそこにあった人や記憶が失われた後に、果たして何が残るのかということから生まれています。中央の墓石が少しずつ上へ伸びていく時間と、その周囲に残された光をぜひ一緒にご覧ください。
■苅部 太郎|Karibe Taro

苅部太郎です。今回展示している作品《あの海に見える岩を、弓で射よ》では、AIというマシンに幻の風景を作らせています。
AIは人間の脳神経回路網を模倣して作られているので、人間と似た認識の振る舞いをすると気がつきました。その振る舞いを可視化する方法として、まずテレビの受信部を接触不良にしてグリッチノイズを発生させ、ブロックノイズだらけになった画面をカメラで撮影しました。その画像を回転、トリミングして、元々何のイメージだったのかわからなくし、生成AIの風景写真認識システムに読み込ませました。
よくわからない複雑な情報を前に、マシンは無理やり風景をでっち上げます。このようにマシンの認識システムを攪乱することで、人間とAIに共通する見立ての働きを引き出し、意味を見出そうとする人間の認識の過程や、マシンから新たなイメージが生成される可能性を探っています。目の前の複雑でランダムな情報を前にして、人間は意味を紡いできました。岩肌のヒビや凸凹を利用して洞窟壁画が生まれ、星と星をつないで星座が生まれました。人間が太古から持つこの見えないものを想像する力が、この世界を豊かにするし、思い込みで人を傷つけているのです。
■市田 小百合|Ichida Sayuri

市田小百合です。今回は空席というタイトルの作品を展示しています。日本の少子化や人口減少を背景に、私自身が育った新潟県を巡り、閉校し建物だけが残された学校を題材にした作品です。
それぞれの校舎を様々な角度から撮影し、その写真を一度解体してコラージュとして新しい形に再構成しています。写真は、紙ではなく、学校を象徴する黒板にスクリーンプリントで直接印刷しています。
また、展示空間には、同じ新潟県内の現在も使われている小学校で録音した子供たちの声や、学校の環境音を使ったサウンドも取り入れています。かつてそこにあった時間と、今はそこにいない子供たちの気配、その両方を感じながら作品を見ていただけたらと思います。
ぜひ黒板の表側だけではなく、裏側に手書きで記された学校の情報や座標、そして展示空間に流れる音にも注目していただけたら嬉しいです。
■藤倉 麻子|Fujikura Asako

藤倉麻子です。本作は《4 Tales of Open Sunrise City》という2面の映像作品と、それに関連するベンチや、平面作品や小プリント群などの立体、立体平面から構成しているものです。
Open Sunrise Cityというのは架空の都市の名前なんですけども、6月に東京駅近くのオフィスビルのエントランスにパブリックアートを設置した際に初めて考えた都市の名前です。今回は、そのパブリックアートの続編というか、新規に制作したものを含めて新しく展開したものになっています。
映像の中には、実写の風景と抽象的なCG映像、両方が出てくるのですが、実写は、東京でよく目にするオフィスビルなどの建設現場で使われている建築資材や、その建築資材のさらに原材料となっているものの採掘現場、製造現場などが東京近郊にあるんですけども、そういうところで撮影させていただいた素材です。
実際に現代の東京を形作っているビルの元となるような風景に、ちょっとずれた近未来というか、パラレルワールドというか、どちらも少し違うんですけども、架空の都市のSF的なフィクションを重ねることで、何か、新しい広がり、接続するポイントみたいなものが生まれないかなと思って制作しているものです。
■橋本 麦|Hashimoto Baku

映像作家の橋本麦です。今回は《Milling Stop-Motion (tentative title)》というタイトルで、コマ撮りアニメーションを公開制作します。
この映像は、イギリスの電子音楽家のマックス・クーパーとのコラボレーションで、だいたい3分間ぐらいのミュージックビデオを最終的には作るんですけれども、今回その映像の中で取り上げるのがフライス盤と呼ばれる工作機械です。
この工作機械というのは、動く回転刃を好きな形に動かすことができて、素材をいろんな形に削り出すことができます。そういう装置を使って、木とかアルミとか、あるいは発泡スチロールとか、いろんな素材の塊っていうのを削り出して、その断面がどんどん変化していく、そのプロセスでアニメーションを作っていきます。
見どころとしては、おそらくこういう手法ではあるので、なかなか一筋縄ではいかないと思うんですね。機械が壊れちゃったりとか、なんか思っていたような映像が撮れなかったりとか、あるいはその撮っている中で新しい撮り方っていうのを思いついたりとか、なんかそういうこう、しっちゃかめっちゃかさというか、行き当たりばったりな感じ、ぐちゃぐちゃした感じというのを見届けていただけたらなと思っています。
すべて 撮影:新井孝明
■音声ガイド(TOPMUSEUM Podcast)
Spotify: https://open.spotify.com/show/3qnmDYD709yx0BdJdvhqRK?si=6d99f348ab8e4a22
ふたたびくみたてる 日本の新進作家 vol.23
2026年9月30日(水)~2027年1月17日(日)
東京都写真美術館 3F展示室
https://topmuseum.jp/exhibition/5423/
