本日は開館しております(10:00-18:00)

杉本博司 《パラマウント・シアター、ニューアーク》 (スタンリー・クレーマー『渚にて』1959) 2015年 ゼラチン・シルバー・プリント 
©Hiroshi Sugimoto/Courtesy of Gallery Koyanagi

2・3F 展示室

杉本博司 ロスト・ヒューマン

2016.9.311.13

  • 開催期間:2016年9月3日11月13日
  • 休館日:毎週月曜日(ただし月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館) ※9月19日開館、翌20日休館/10月10日開館、翌11日休館
  • 料金:一般1000(800)円、学生800(640)円、中高生・65歳以上700(560)円 ※9月19日(月・祝)敬老の日は65歳以上の方は無料(受付時、要証明書) ※10月1日(土)都民の日は無料 ※( )は20名以上の団体料金、当館の映画鑑賞券ご提示者、各種カード会員割引(ご利用案内をご参照ください)/ 小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料 ※本展覧会は混雑状況によって、入場制限をする場合がございますので、あらかじめご了承ください

東京都写真美術館はリニューアル・オープン/総合開館20周年記念として「杉本博司ロスト・ヒューマン」展を開催します。杉本博司は1970年代からニューヨークを拠点とし、〈ジオラマ〉〈劇場〉〈海景〉などの大型カメラを用いた精緻な写真表現で国際的に高い評価を得ているアーティストです。近年は歴史をテーマにした論考に基づく展覧会や、国内外の建築作品を手がけるなど、現代美術や建築、デザイン界等にも多大な影響を与えています。

本展覧会では人類と文明の終焉という壮大なテーマを掲げ、世界初発表となる新シリーズ<廃墟劇場>に加え、本邦初公開<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない>、新インスタレーション<仏の海>の3シリーズを2フロアに渡って展示し、作家の世界観、歴史観に迫ります。
展覧会はまず、文明が終わる33のシナリオから始まります。「今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない」という杉本自身のテキストを携え、≪理想主義者≫≪比較宗教学者≫≪宇宙物理学者≫などの遺物と化した歴史や文明についてのインスタレーションを巡り歩きます。これは2014年パレ・ド・トーキョー(パリ)で発表し、好評を博した展覧会を東京ヴァージョンとして新たに制作したもので、自身の作品や蒐集した古美術、化石、書籍、歴史的資料等から構成されます。物語は空想めいていて、時に滑稽ですらあります。しかし、展示物の背負った歴史や背景に気づいた時、私たちがつくりあげてきた文明や認識、現代社会を再考せざるを得なくなるでしょう。

そして、本展覧会で世界初公開となる写真作品<廃墟劇場>を発表します。これは1970年代から制作している<劇場>が発展した新シリーズです。経済のダメージ、映画鑑賞環境の激変などから廃墟と化したアメリカ各地の劇場で、作家自らスクリーンを張り直して映画を投影し、上映一本分の光量で長時間露光した作品です。8×10大型カメラと精度の高いプリント技術によって、朽ち果てていく華やかな室内装飾の隅々までが目前に迫り、この空間が経てきた歴史が密度の高い静謐な時となって甦ります。鮮烈なまでに白く輝くスクリーンは、実は無数の物語の集積であり、写真は時間と光による記録物であるということを改めて気づかせてくれるこれらの作品によって、私たちの意識は文明や歴史の枠組みを超え、時間という概念そのものへと導かれます。その考察は、シリーズ<仏の海>でさらなる深みへ、浄土の世界へと到達します。<仏の海>は10年以上にわたり作家が取り組んできた、京都 蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)の千手観音を撮影した作品です。平安末期、末法と呼ばれた時代に建立された仏の姿が、時を超えていま、新インスタレーションとなって甦ります。
人類と文明が遺物となってしまわないために、その行方について、杉本博司の最新作と共に再考する貴重な機会です。ぜひご高覧ください。


PROFILE
杉本博司(すぎもとひろし)/現代美術作家
1948年東京生まれ。1970年に渡米し、アート・センター・カレッジ・オブ・デザイン(L. A.) で写真を学び、1974年よりニューヨーク在住。明確なコンセプトに基づき、大型カメラで撮影 された精緻な写真作品を制作し、国際的に高い評価を確立、2001年ハッセルブラッド国際写真賞、 2009年高松宮殿下記念世界文化賞受賞。「歴史の歴史」展(カナダ、アメリカ、国立国際美術館、 金沢21世紀美術館など、2003-2009)、ガラスの茶室「Glass Tea House Mondrian/聞鳥庵」 (ヴェネツィア、2014)、「趣味と芸術-味占郷/今昔三部作」(千葉市美術館、2015)など多数。

作家へのスペシャル・インタビューはこちら(広報誌「eyes87号」にリンクします)


出品作品紹介

シリーズ<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない> 3階展示室
シリーズ<廃墟劇場> 2階展示室
シリーズ<仏の海> 2階展示室


シリーズ<今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない> 
文明が終わる33のシナリオ 「《理想主義者》《比較宗教学者》《宇宙物理学者》など33 のシナリオがあり、私が選んだ作品と様々な物で構成されます。」 (杉本博司インタヴューより)    


©Sugimoto Studio
〈海景〉 《ガリラヤ海、ゴラン》 1992年 ゼラチン・シルバー・プリント

シリーズの冒頭は杉本の代表作<海景>。
作家自身の解説で33の物語の扉が開かれる。
「太陽系の第3惑星地球には大量の水が存在し、5億5千年程前から水中での有機物による爆発的な生命現象の連鎖が始まった。生命は人類にまで進化し、今回の2万年程の間氷期の間に文明の発生を見た。しかし様々な困難により文明は衰退し、そしてそこに残されたのは文明の廃虚だった。」



©Sugimoto Studio
長崎型原爆製造に使用された、原子炉内核融合目視確認のための覗き窓に使われた硝子塊。原子炉廃炉後、解体され、球に磨かれた。重鉛成分のため黄色で極めて重い。
 

理想主義者
「今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。人間は理想という名のもとにおいてはどんな惨たらしいことでもするものだ。自由、平等、博愛の名の下に、フランス革命のギロチンは休む暇もなかった。共産主義もバラ色の未来を人類に描いてくれた。そして大粛清が始まった。民主主義対ファシズムという単純化によって、広島、長崎の原爆投下は看過された。(略)」
   
 


©Sugimoto Studio
ラストサパー サンディ  1999/2012年  ゼラチン・シルバー・プリント
 

比較宗教学者
作家註: 2012年10月、ニューヨークを襲ったハリケーン・サンディーにより筆者の地下倉庫と作品群は水没した。3日後、水が引いてみると、蠟人形館で撮影した「ラストサパー」は、キリストの顔が半溶解した、素晴らしい古色の付いた作品と化していた。
   
 
                           

©Sugimoto Studio
キャンベル・スープ缶 2014年
キャンベル・スープ缶用棚 年代不詳
 

コンテンポラリー・アーティスト
「今日、世界は死んだ。もしかすると昨日かもしれない。後期資本主義時代に世界が入ると、アートは金融投機商品として、株や国債よりも高利回りとなり人気が沸騰した。若者達はみなアーティストになりたがり、作品の売れない大量のアーティスト難民が出現した。ある日突然、アンディー・ウォーホルの相場が暴落した。キャンベルスープ缶の絵は本物のスープ缶より安くなってしまった、そして世界金融恐慌が始まった。瞬く間に世界金融市場は崩壊し、世界は滅んでしまった。アートが世界滅亡の引き金を引いた事に誇りを持って私は死ぬ。世界はアートによって始まったのだから、アートが終わらせるのが筋だろう。」
   
 

シリーズ<廃墟劇場>
ワールド・プレミア! 世界初公開される待望の新シリーズ
<廃墟劇場 Abandoned Theater> 1970年代から制作している<劇場>が発展した新シリーズ。アメリカ各地の廃墟と化した映画館を探し出し、スクリーンを張り直し、作家自ら歴史の終わりを主眼に選んだ映画を投影し、上映一本分の光量で露光した作品。8×10大型カメラによる長時間露光と精度の高いプリント技術によって、朽ち果てていく劇場の華やかな装飾の隅々までが目前に迫る。撮影時に上映した映画について、作家自らの解説文が付される。


杉本博司 《パラマウント・シアター、ニューアーク》 (スタンリー・クレーマー『渚にて』1959) 2015年 ゼラチン・シルバー・プリント
©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi

『渚にて』 On the Beach, 1959
スタンリー・クレーマー Stanley Cramer
第三次世界大戦が勃発し、核攻撃の応報ですでに北半球は死の世界と化した。帰還する港を失った米国原子力潜水艦艦長タワーズは、まだ放射能汚染されていないメルボルンに入港する。そこで学者達と人類生存の可能性を探るため北極海へ向かうが、そこも汚染され、すべての道が断たれたことを知る。再びメルボルンで人類に残された最後の数週間を恋人と過ごすタワーズ。人々はそれぞれ静かに死を迎える準備に かかる。

たけき者も遂にはほろびぬ ひとえに風の前の塵に同じ



シリーズ<仏の海>   
10年以上にわたり作家が取り組んできた、京都 蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)の千手観音を撮影した<仏の海>の待望の大判作品による新インスタレーションです。
「仏像を見るとは信仰のほとんど失せてしまった現代人にとって、どのような体験なのだろうか。平成6年、私は京都妙法院三十三間堂千体仏の撮影を許可された。実に7年にも及ぶ撮影許可の交渉と2階の不可かの末の許諾であった。  
なぜ私がこれほどまでに執着したかには訳があった。それはどうしても見たいものがあったからなのだ。平安末期後白河法皇の御所、法(ほう)住寺(じゅじ)殿(どの)の御堂として平清盛によって建立され、鎌倉期に再建されて以来、ほとんど当時のままに伝えられてきた一千一体の千手観音と二十八部衆を、再びこの世で創建当時の理想的な光で見てみたいという望みを私は持ったのだ。  
末法の世に西方浄土を出現させたいという想いがこの建築には秘められている。」 (杉本博司「末法再来」『苔のむすまで』新潮社、2005年より)


□主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都写真美術館
□助成:公益財団法人朝日新聞文化財団 
□協賛:東京都写真美術館支援会員
□協力:公益財団法人小田原文化財団/ヤマトロジスティクス株式会社/日本貨物航空株式会社/株式会社鴨川商店/山口製材株式会社/株式会社コルグ/YEBISU GARDEN CINEMA


本展展示室内の撮影はご遠慮ください。 ロビーは撮影可能なエリアです。
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※事業はやむを得ない事情で変更することがございます。


関連イベント

連続対談
2016年9月3日(土) 14:00~16:30  終了致しました
文明の終焉という壮大なテーマについて、歴史・思想的側面から文化まで幅広く掘り下げる対談です。
浅田彰(批評家、現代思想)×杉本博司
都築響一(写真家、編集者)×杉本博司
会 場:東京都写真美術館 1階ホール
定 員:190名(整理番号順入場/自由席)
入場料:無料/要入場整理券  当日10時より1階ホール受付にて入場整理券を配布します。

「杉本博司 ロスト・ヒューマン」連続対談の入場整理券は配布を終了しました。
The distribution of numbered tickets for talk event related Sugimoto Hiroshi Show at 1F hall finished.
ワールド・プレミア<廃墟劇場>初公開記念 恵比寿ガーデンシネマの協力で、特別上映が決定!!
◆映画『羅生門』(黒澤明監督、1950年)
ボストンの廃墟と化した劇場で、杉本博司自らがスクリーンを張り直し、上映に選んだのは『羅生門』でした。
『羅生門』全編を上映している間、1時間28分、8×10のカメラのシャッターを開放しつづけ、映画上映の光量のみで撮影し、写真作品を制作しました。
今回はこの作品の新作発表、ワールド・プレミアを記念して、『羅生門』デジタル完全版(角川映画)をYEBISU GARDEN CINEMAの美しい劇場空間で上映します。本編前に『羅生門』の光で撮影した杉本の写真作品を初めて、特別にスクリーンでご覧いただく予定です。

日程:2016年10月15 日(土)~21日(金) 終了致しました
主催:YEBISU GARDEN CINEMA
*10/19(水)19時より杉本博司によるトーク有り。トーク終了後より上映。 トークイベントのご案内はこちら
*10/19(水)を除く、10/15(土)~10/21(金)の上映時間は、劇場HPをご覧ください。
会場:YEBISU GARDEN CINEMA (恵比寿ガーデンプレイス内)
上映時間:1時間28分
チケット販売:各上映日の3日前より販売(オンライン販売は3日前のAM0:00から、劇場での販売は3日前の劇場オープン時間からとなります。)
詳細につきましては劇場ホームページをご覧ください。
お問合せ:0570-783-715(24時間自動音声案内 オペレータ受付時間:全日10:00~20:00)
映画『杉本博司 作 朗読能「巣鴨塚」』
2016年10月29日(土) 14:00~  終了致しました
2016年10月29日(土) 18:00~(各回入替制・開場は上映30分前)  終了致しました
杉本博司は、東京裁判A級戦犯・板垣征四郎が収監中の巣鴨プリズンでうたった漢詩を元にした謡曲: 修羅能「巣鴨塚」を書き下ろし、能公演化をめざす創作活動を始めました。その起ち上げから、実験的 に試演された朗読能『春の便り能「巣鴨塚」より公演(2015 年)までの記録映像を上映します。
主催・制作:公益財団法人小田原文化財団
作・構成・出演:杉本博司
作調:亀井広忠
出演:余貴美子、大島輝久 他

会 場:東京都写真美術館 1 階ホール(定員190 名)
上映時間:1時間30分 入場券 1,000円 当日10 時より1 階ホール受付にて販売 (入場整理番号付)整理番号順入場/自由席 ※未就学児の入場不可
お問合せ 小田原文化財団 info@odawara-af.com Tel: 03-3473-5235(平日11:00-17:00)
展覧会担当学芸員によるギャラリートーク
2016年9月9日(金) 14:00~  終了致しました
2016年9月23日(金) 14:00~  終了致しました
2016年10月14日(金) 14:00~  終了致しました
2016年10月28日(金) 14:00~  終了致しました
2016年11月11日(金) 14:00~  終了致しました
会期中の第2・第4金曜日14:00 より、担当学芸員による展示解説を行います。
展覧会チケット(当日消印)をご持参のうえ、3階展示室入口にお集まりください。

展覧会図録

杉本博司 ロスト・ヒューマン
全出展シリーズ、作家略歴、出品リスト等を掲載しています。
執筆 杉本博司、三木あき子、丹羽晴美(東京都写真美術館 学芸員)
A4変形、248頁、東京都写真美術館発行、2,500円(税込)

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