本日は開館しております(10:00-18:00)

植物の葉 「自然の鉛筆」より
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット 1844年 フォトジェニック・ドローイング
3F 展示室

自然の鉛筆 技法と表現

平成24年度東京都写真美術館コレクション展

2012.7.149.17月・祝

  • 開催期間:2012年7月14日9月17日月・祝
  • 休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
  • 料金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円 ※ただし、9月17日(月・祝)は65歳以上は無料(受付時、要証明書)
  • ※各種カード割引あり

( )は20名以上団体、当館の映画鑑賞券ご提示者、上記カード会員割引(トワイライトカードは除く)/
小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料/第3水曜日は65歳以上無料

当館では毎年テーマを設けて、コレクションから選りすぐられた名作をご紹介しています。今年のテーマは写真における「表現と技法」です。
ダゲレオタイプ(1839年)とカロタイプ(1840年)のふたつの写真術が発表されて以来、写真は常に「光学」と「化学」の変遷によって表現の幅を拡げてきました。本展では、写真における「化学」に焦点を絞り、プリント技法の変遷と表現、さらに印画紙の古典技法と現代表現や、モダニズムにみるカメラレス・フォトグラフィなどに注目。世界初の写真集『自然の鉛筆』や、世界最初のカラー写真『アジャンの風景、木と水の流れ』をはじめ、珠玉の名作180点を一堂に展示します。デジタル写真の浸透によりフィルムを知らない世代も増えている昨今、写真技法の変遷と、写真にしかできない表現の豊かさは、これから写真がどこに向かうのかという問いにヒントを与えてくれることでしょう。

■本展の見どころ
①東京都写真美術館が世界に誇る珠玉の名作180点を展示。豪華な出品作家ラインナップに注目!
②世界初の写真集、ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット『自然の鉛筆』(1844-46年)を展示!
②写真とその表現を支える「技法」とのかかわりを、わかりやすい解説と名作で実感!

左)赤と緑、モデナ フランコ・フォンタナ 1977年  銀色素漂白方式
右)「アジャンの風景、木と水の流れ」 ルイ・デュコ・デュ・オロン 1872年 エリオクロミィ ※世界初のカラー写真

左)エドワード・ウェストン <ヌード> 1936年 ゼラチン・シルバー・プリント
右)森山大道 <新宿> 1969年 ゼラチン・シルバー・プリント

石元泰博<とんできた色紙#3>1989年 ラスロ・モホイ=ナジ<フォトグラム>1922年頃 マン・レイ 「エレクトリシテ」より 1931年
左)石元泰博 <とんできた色紙#3> 1989年 銀色素漂白方式印画
中央)ラスロ・モホイ=ナジ <フォトグラム> 1922年頃 ゼラチン・シルバー・プリント
右)マン・レイ 「エレクトリシテ」より 1931年 フォトグラビア印刷 ※フランスの電力会社の広報用として制作。10点組の全点を展示

■主な展覧会構成
<第1章:紙の印画>
~タルボットからはじまる複製芸術の進化~
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットのフォトジェニック・ドローイングをさらに進化させたカロタイプによって、紙の印画を基にする写真術の歴史は幕を開けた。カロタイプの優れたところは、アナログ写真のネガ・ポジ法の原型となる発明で、1枚のネガ像から同一のポジ像を複数得ることができる特質がある。しかし、発明当時の画像は不鮮明で画像も消えやすく、タルボットはこの技法にいくつかの特許を取得のため、使用も簡単ではなく、商業的成功を見ることはなかった。しかし、画像の階調のコントロールや紙の選択によって、作者の意図や心情を反映させる余地があり、不鮮明な輪郭が逆に柔らかな効果を生み出すことから、一部の芸術家たちはこの技法に注目した。
このネガ・ポジ法という考え方は、その後、ネガをつくるネガ現像法と、ポジをつくる印画技法とそれぞれ独自に発展させることになる。そして、印画技法は産業革命の発展と同調するように、商業的成功をおさめていく。印画紙の生産は工業化され、会社組織の工業製品として改良が重ねられ、安定した製品を大量に生み出した。単塩紙、鶏卵紙、プラチナ印画、ゼラチン・シルバー・プリント、ピグメント印画、カラー写真の印画など、時代のニーズに応えるように数々の技法が生みされていく。
紹介する技法:フォトジェニック・ドローイング/カロタイプ/単塩紙/鶏卵紙/プラチナ・プリント/ゼラチン・シルバー・プリント/カーボン・プリント/ゴム印画/ブロムオイル/ウッドバリータイプ/フォトグラビア印刷/フォトグラム/ソラリゼーション/ネガ・フォト

<第2章:金属・ガラス印画>
~世界にひとつだけの写真~
写真の発明としてはダゲレオタイプが世界初とされるが、カロタイプのように一回の撮影で何枚もポジ像がつくれる複製の機能を持たなかった。発明当初からしばらくの間は、細部の描写が優れていたことと、フランスが国をあげて、この技法を推進したこともあり、カロタイプよりも圧倒的な人気を博し、「ダゲレオタイプ・マニア」が出現するほど熱狂的反応を巻き起こした。特に商業的な肖像写真の分野で発展した。肖像写真のための営業写真館が登場した。そのなかでも、アメリカのマシュー・B・ブレイディはニューヨークに肖像スタジオを開き商業的にも成功し、作業工程を分業化するなど、大規模なプロダクション・システムを作り出した。
ダゲレオタイプは扱いに手間がかかり価格も高かったことから、アンブロタイプやティンタイプが、新たな代用として登場する。画像の精細の点では劣ったが、特にティンタイプはガラスのように割れることがなく、丈夫で軽量なため、郵送されることもあり、身近なものとして受け入れられた。
紹介する技法:ダゲレオタイプ/アンブロタイブ/ティンタイプ

<第3章:カラー写真の展開>
~カラー表現の追求-不動の地位を築くまで~
モノクロ写真が発展を遂げる一方で、カラー表現の追及も始まっていた。研究者たちは、自然界のすべての色彩は赤、青、緑という三原色の組み合わせであると考えた。1861年にスコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マックスウェルが、格子縞のリボンを写した3枚のランタンスライドのポジを重ね合わせ、カラー写真を生み出した。また、同時期にフランスで、ルイ・デュコ・デュ・オロンが同じような実験を試みエリオクロミィを発表している。しかし、彼らの試みは実用的なカラー写真として成功したとは言い難かった。
カラー写真の商業的成功は、1904年にフランスのオーギュストとルイのリュミエール兄弟が「オートクローム」を考案するまで、果たされなかったといっていいだろう。コストが高くて露光時間も長く、撮影後の画像をビュワーで見なければならなかったが、意外にも多くの人に受け入れられた。しかし、この技法も色彩の自然さという点で改良の余地を残していた。
真の意味で、カラー写真が実用化されたといえるのは、1935年にイーストマン・コダック社のコダクロームという三層式のポジ・フィルムが発売されてからであろう。それ以後、カラー写真は大衆の間で圧倒的シェアを獲得し、その後、色素転写方式、拡散転写方式、発色現像方式、銀色素漂白方式などが開発され、不動の地位を得ていく。
紹介する技法:エリオクロミィ/オートクローム/色素転写方式印画/拡散転写方式印画/発色現像方式印画/銀色素漂白方式印画



■主な出品作家
W.H.F.タルボット/デヴィッド・オクタヴィアス・ヒル&ロバート・アダムソン/エドュアール=ドニ・バルデュス/ジュリア・マーガレット・キャメロン/ルイス・キャロル/下岡 蓮杖/ギュスターヴ・ル・グレィ/日下部 金兵衛/ティモシー・H.オサリヴァン/ギューム=ベンジャミン・アマン・デュシェンヌ・ド・ブローニュ/ピーター・ヘンリー・エマソン/ジャン・グルーバー/田原 桂一/アーヴィング・ペン/ロール・アルバン=ギヨー/永江 博/ハインリッヒ・キューン/大久保 好六/ナダール/アルフレッド・スティーグリッツ/ポール・ストランド/マン・レイ/ラスロ・モホイ=ナジ/瑛九/アルベルト・レンゲル=パッチュ/アウグスト・ザンダー/エドワード・ウエストン/アンセル・アダムス/ウォーカー・エヴァンズ/ロバート・フランク/ウィリアム・クライン/ゲリー・ウィノグランド/ダイアン・アーバス/ブルース・デヴィッドソン/マーティン・ムンカッチ/リチャード・アヴェドン/アンリ・カルティエ=ブレッソン/ジャック=アンリ・ラルティーグ/マリオ・ジャコメリ/エーリッヒ・ザロモン/森山 大道/杉本 博司/ヨセフ・スデック/石元 泰博/松江 泰治/ユーサフ・カーシュ/林 忠彦/木村 伊兵衛/植田 正治/東松 照明/荒木 経惟/深瀬 昌久/マシュー ・ブレイディ ズ・ スタジオ/ルイ・デュコ・デュ・オロン/ハリー・キャラハン/山沢 栄子/ウィリアム・エグルストン/ジョン・ディヴォラ/ロバート・ラウシェンバーグ/チャック・クローズ/フランコ・フォンタナ/ポール・フスコ/ナン・ゴールディン/シンディ・シャーマン/リチャード・ミズラック/マーティン・パー/奈良原 一高/山崎 博/尾仲 浩二 ほか

スタジオレイのサイトに取材・紹介されました。記事はこちらから

□ 主催:東京都 東京都写真美術館
□ 協賛:凸版印刷株式会社
□ 協力:平凡社

関連イベント

プラチナ・プリント・ワークショップ(事前申込制)
2012年7月7日(土) 10:30~17:00【Aコース】  終了致しました
2012年7月8日(日) 10:30~17:00【Bコース】   終了致しました
プラチナ・プリントは、1920年代まで盛んに使用されていた方式です。単に古典的な方式にとどまらず、階調の豊かさや保存性の高さから、今日でも多くの写真家に支持される印画方式です。本ワークショップでは、参加者にご持参いただく写真データを元にデジタルネガを作成し、このネガを元に参加者が塗布したプラチナ・パラジウム・プリント紙に紫外線光源を用いて焼き付けを行います(2枚制作)。なお、成果物は水洗・乾燥ののち、後日郵送致します。銀塩よりもさらに深いひろがりのプリントをご自身の手で体験してみませんか?
会場:1階創作室(アトリエ)
講師:西丸 雅之
定員:各コース20名ずつ 申込多数の場合は抽選あり
参加対象:中学生以上(暗室作業経験がある方)
参加費:一般5,000円  学生3,500円
申込締切:2012年6月25日(月) 12:00必着
申込方法:電子メールまたはFAXのいずれかで、講座名、希望コース名/参加日、申込者の郵便番号、住所、氏名、連絡先(メールアドレスあるいはFAX番号)をご記入の上、下記の申込先までお送りください。電子メールの場合は、メール件名に「プラチナ・プリント・ワークショップ」と必ずご記入下さい。抽選結果については、申込締切後に、お申し込みいただいた方法でご連絡致します。
申込先:東京都写真美術館ワークショップ
(メールアドレス) tmmp_edpg1133ebisu@syabi.com
(FAX) 03-3280-0033
詳細はワークショップページをご覧ください。
デジタル画像からの鶏卵紙プリント・ワークショップ
2012年8月18日(土) 10:30~17:00  終了致しました
2012年8月19日(日) 10:30~17:00  終了致しました
鶏卵紙プリントは、1850年代から盛んに使用された19世紀を代表する写真印画方式です。また、単に古典的な方式にとどまらず、今日でも多くの写真家に支持される印画方式です。本ワークショップでは、参加者が制作した写真データ*を元にデジタルネガシートを作成し、このネガシートを元に、鶏卵紙へ紫外線光源を用いて焼き付けを行います(2枚制作)。鶏卵紙の制作も参加者自身が行います。成果物は水洗・乾燥ののち、後日郵送致します。
19世紀のプリントをご自身の写真を使って体験する貴重な機会となります。
詳細はワークショップページをご覧ください。
担当学芸員によるフロアレクチャー
2012年7月27日(金) 16:00~  終了致しました
2012年8月10日(金) 16:00~  終了致しました
2012年8月24日(金) 16:00~  終了致しました
2012年9月14日(金) 16:00~  終了致しました
※本展覧会の半券(当日有効)をお持ちの上、会場入口にお集まりください。
「鑑賞ワークシート」配布中!



写真の誕生から写真印画の変遷をわかりやすく解説した鑑賞ワークシート「自然の鉛筆の技法と表現」をご用意しています。「写真って専門知識がないとむずかしそう…。」という方もぜひ鑑賞の手引きにご活用ください。
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展覧会図録

光と影の芸術  写真の表現と技法
「光の造形-操作された写真」、「自然の鉛筆 技法と表現」、「機械の眼 カメラとレンズ」の各展より代表的な出品作品を掲載した関連書籍です。B5判 174ページ 発行:平凡社

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